撮影:言美歩

何歳になっても若々しくあろうとがんばれる人は、それでいいと思います。“美魔女”も否定はしません。でも私は、しんどかった。そういう人には、がんばらなくていいという選択肢があるのだということを、皆さんにも気づいてほしいなと思います

白髪を染めず、自然体でテレビに映る近藤サトさんの姿に注目が集まっています。最近、『グレイヘアを生きる』という書籍も刊行。華やかな存在感でテレビを賑わせていた頃から、どのような心境の変化があったのでしょうか。

自由に気持ちよく生きるために

47歳から白髪を染めることをやめました。目下グレイヘアに移行中で、まだ半分くらい黒い状態です。

私の場合、白髪が出始めるのが早く、20代後半から悩まされていました。そのためフジテレビのアナウンサーをしていた頃から、白髪染めが欠かせなくて──。ちょっとでも根元が白くなってくると気になり、美容室に行かなくてはいけない。それが少々わずらわしかったので、いつかやめられないかな、という漠然とした思いを持っていました。

また、2011年の東日本大震災の後、災害時用グッズを揃えた際に、白髪染めもその中に入れたのですが、非常時に髪を染めるってどうなんだろう、無駄な行為ではないかと、ふと疑問に思ったのです。

さらに5、6年前、左目が眼瞼下垂(まぶたが垂れ下がり、目が開けにくい状態)になり、手術を受けました。その時に執刀医の先生が、「女性は若々しく見せるためにあの手この手でプチ整形をするけれど、老眼ばかりは僕たちにも治せないんです」とおっしゃって。それを聞いて、どんな人にも老いは訪れるのに、無理して若々しさを求める必要があるのかと、また疑問が湧きました。そんなことが重なり、「わざわざ染めなくてもいいのでは?」という気持ちが強まっていったのです。

そして、やめる決心を固めさせたのが、男の人をだましてお金を手に入れていた、ある女性詐欺師の初公判のニュースでした。私はテレビ番組のナレーターとしてそのニュースにかかわりましたが、現場のリポーターが、「被告人は、頭髪に白いものが目立ってやつれた様子だった」というようなことを言ったのです。その時、私がリポーターだったらそうは言わないだろうな、とモヤモヤした気持ちが残りました。

その女性詐欺師は年齢より若々しいファッションで世を賑わせていたから、でも実際はこんなに歳をとっているんだという、揶揄(やゆ)のようなものをリポートから感じたのでしょうね。さらには、もしその詐欺師が男性だったら、このような言われ方はしないのではないか、とも。女性だから世間の人たちも、白髪が目立ちはじめた途端、「なんだ、けっこうオバアサンだったのね」と溜飲を下げる。それは気の毒だし、ちょっと理不尽な気がしたのです。

そんなことがあって、白髪を染めるのをやめようと決意。とはいえ、しばらくは大変でした。まず所属事務所の社長の反応は、「60歳を過ぎてからでいいんじゃないの? 50代では、そんなに“大御所感”が出ないよ」というもの。

私は別に大御所になりたいわけではなくて(笑)、自由に気持ちよく生きたいだけ。ただ、社長は無理に染めろとは言わなかったので、自分の思いを通すことにしました。

ところが根元が白い状態でテレビに出ようとしたら、女性のアシスタントプロデューサーが白髪隠しスプレーを持って飛んできて、「私がやりますっ!」と、シューッ(笑)。「隠してください」と言われました。

確かに根元だけ白いと視聴者の方も気になるだろうし、“手を抜いている”“だらしない”と思われかねません。ですから1年近く、白髪隠しスプレーを使っていました。