だが、美沙は「ごめん」と返した。「悪いけど、わたしの考えは正反対だから」
 観ないのが親ゴコロ、応援しないのがケンゾーの奮闘に報いること──。
「急に主役がいなくなったら、うまくいくわけないよね。あの子、それをわたしたちには見せたくないと思う。この程度かって思われるの、やっぱり嫌でしょ」
「いや、でも、うまくいかないときも含めて現実なんだから、そこから目を逸らすのは逃げてるのと同じだろ」
「だから親ゴコロって言ったでしょ。わたしは、ケンちゃんが観てほしくないものは観ないであげたい。あの子が自信を持って、胸を張れるお芝居だけを観てあげたい。だって、そうしないと……」
 少し間を空けたあと、ためらいを振り切って続けた。
「うまくいってないところを目にすると、やっぱり、親としては、もう、そろそろ……って言いたくなるから」
 孝夫はため息を呑み込んだ。同意はしない。納得もできない。じゃあ言ってやれよ、そのほうが長い目で見たらケンゾーのためだろ、と諭したい気持ちもある。
 一方、追っかけセブンの三人は、円卓の上をてきぱきと片づけながら言った。
「わたしたちはホムホムのためにできることをやるからね」「次の次、ラストの舞台で勝負だから、ホムホムもウチらも」「ホムパパとホムママも付き合って」
 なにを──?
「ラストの舞台って四時からでしょ?」「だいじょうぶ、余裕で間に合う」「よし、行こう!」
 どこに──?
 椅子から立ち上がって「イエーイ!」とハイタッチを交わした三人は、『手裏剣スナイパーズ』の忍者たちよりはるかに息の合ったタイミングで声を揃えた。
「ホムパパ、運転しなさい!」

 いま、追っかけセブンと孝夫と美沙がいる場所は、遊園地の外のショッピングモール──雑貨の量販店で、推し活の必須アイテム・キングブレードを、どっさり買い込んでいるのだった。