八重咲きのヤマブキ

娘の差し出した花の深い意味

道灌は、差し出された歌を読んで、ハッとしました。合点のいかなかった話のすべての意味がやっとわかったのです。娘の差し出した八重のヤマブキの花が咲く一枝には、「実の一つだに なきぞ悲しき」に「蓑一つだに なきぞ悲しき」の意味が込められていたのでした。

娘は、この枝に「せっかく頼まれたのに、お貸しする蓑は一つもないほどの貧しい暮らしぶりであることを悲しく思う」との気持ちを込めていたのです。一本の枝に、「自分の貧しい暮らしぶりを悟ってほしい」との思いを託して、道灌に丁重に断りを告げていたのです。

道灌は、そのような娘の気持ちを理解することができなかった自分のあまりの無学さを、ひどく恥じました。切り枝に託した娘の気持ちに思い至らず理解できなかったことに、申し訳ない思いで胸がいっぱいとなりました。腹を立てるように、娘の前から立ち去ってきた自分の浅はかさを情けなく思いました。

娘の教養の高さに感服した太田道灌は、その後、懸命に勉学に励み、江戸城を立てるほどの人物に出世しました。また、歴史上、学問、文学に造詣が深く、和歌、連歌などの詩歌に長じた人物として歴史に残るまでになりました。

ヤマブキは、人間を発奮させる力をもつ植物なのです。

ヤマブキ(山吹)

[科名]バラ科
[別名]オモカゲグサ(面影草)
[原産地]日本、中国
[花言葉]気品、崇高、富裕
●朝生ゆりこさん『「日本の花を愛おしむ」原画展 にぎやかな花たち』 は、3月23日まで AYUMI GALLERYで開催中 詳細はこちら