MARUU=イラスト
阿川佐和子さんが『婦人公論』で好評連載中のエッセイ「見上げれば三日月」。「スロー」という言葉に疑問を持つことからはじまり、「w」の発音や「rとl」問題など英語の発音にまつわるエピソードを回想。日本語に存在しない発音の難しさを痛感する佐和子さんなのでした――。

※本記事は『婦人公論』2022年5月号に掲載されたものです

北京オリンピックのフィギュアスケートペアを見ていたら、実況アナウンサーが、「いやあ、見事なスロージャンプでした!」「スロージャンプ、距離も高さもありました!」と感動のコメントをつけていた。

そもそもフィギュアの専門用語は難しく、トリプルアクセルとかキャメルスピンとかデススパイラルとか、一つ覚えるとまた一つ、新しい言葉が出てきて、しかもスピーディな演技のことだから、その技が完成しているのかどうかもわからない。転ばなければいいじゃないのとこちらは思うが、そういう問題ではないらしい。

そんなとき、頻繁に登場した「スロージャンプ」という声を聞き、

「どこがスローなんだ?」

私は首を傾げた。もしかして優雅に跳んで着地するまで、スローモーションのように美しく跳ぶことが求められているジャンプなのかと必死に目を凝らす。

わからんぞ、どこがゆっくりなのだろう......。