そしてまもなく気がついた。スローとは、「ゆっくり」のスローではなく、「throw」すなわち、「放り投げる」の意味だったのだ。

なに、そんなことも知らなかったのかと笑われるかもしれないけれど、知りませんでした。

ただこれはアナウンサーが「th」の発音ができないせいではない。おそらくだが、日本語に存在しない発音は、より視聴者にわかりやすい音にして表現するよう放送業界で決められているのだと思われる。外国語のカタカナ表記は得てしてそういう配慮がされている。

だいぶ昔、ホイットニー・ヒューストンのコンサートへ行った。舞台の上にて見事な声量で何曲か歌い上げたのち、彼女がマイクを持って客席に語りかけた。

「こんばんは。今夜はようこそ、私のコンサートへ来てくださいました。ホイットニー・ヒューストンです!」

そう言って一人でケラケラ笑い出した。何事かと思えば、

「日本に来たらみなさんが私のことをホイットニーヒューストンと呼ぶので笑っちゃいました。アメリカではいつも、ウィッニー・ヒュースタン(この表記も正確ではないが)と呼ばれているので」

決して気を悪くしているわけではない様子だったけれど、驚いたことは確かであろう。