マリアノ・フォルチュニ《オペラジャケット》1920年代絹ゴーズにステンシル・プリント、トンボ玉《デルフォス》1920年代絹サテン・トンボ玉 神戸ファッション美術館

 

マリアノ・フォルチュニ
織りなすデザイン展

〜10月6日
三菱一号館美術館
☎03・5777・8600(ハローダイヤル) 

美のエリートが生み出した
優雅なハイファッション

20世紀初頭、画家でありながら、ファッション・デザイナーとして活躍したスペイン生まれのマリアノ・フォルチュニ(1871-1949)。本展は、日本ではまだあまり知られていない彼の全貌に迫る、我が国初の大回顧展である。

フォルチュニのデザイナーとしての代表作と言えば、1910年代に彼が世に送り出した《デルフォス》だ。彼は、日本から輸入した最高級の絹地を鮮やかな色に染め、現在も解明不能な秘密の技術で細かい襞を施して、古代ギリシャ風のドレスをつくった。肩から流れ落ちる襞が着る人の身体を優雅に覆うプリーツドレスは、女性をコルセットから解放したといわれている。

上の写真で《デルフォス》の上に羽織っている《オペラジャケット》は、薄い絹のジャケット。エキゾチックなステンシル・プリントが施されている。フォルチュニは、テキスタイルデザインや染色などを、有能な助手でもあった妻アンリエットとともに行い、その優雅なハイファッションを自身のヴェネツィアの工房から、パリやニューヨークのセレブリティに販売した。

マリアノ・フォルチュニ《アンリエット・フォルチュニ、芸術家の妻》1915年テンペラ/厚紙 フォルチュニ美術館©Fondazione Musei Civicidi Venezia-Museo Fortuny

愛妻を描いた《アンリエット・フォルチュニ、芸術家の妻》を見てもわかるように、フォルチュニは元来画家である。父も19世紀スペイン画壇の中心的な人物で、この父と祖父が2代にわたってプラド美術館の館長をつとめた。生まれた時から美のエリートであったフォルチュニが、いかにしてあの革新的なドレスをつくり、自らのブランドを大成功に導いたのか? 彼の華麗なる人生に、ため息が出ることだろう。

 

ジュリアン・オピー
Julian Opie

7月10日〜9月23日
東京オペラシティ アートギャラリー
☎03・5777・8600(ハローダイヤル)

都市も人も簡略化されて

イギリスを代表する現代美術家のひとり、ジュリアン・オピー(1958-)。目や鼻を黒い点だけであらわし、輪郭にはマーカーで描いたような太い線を多用した、ポップでシンプルなポートレートが知られている。また現代社会に生きる人々を、注意喚起する時などに使われるピクトグラム風に表現した作品も有名だ。本展は、日本の美術館では11年ぶりに開催される、ジュリアン・オピーの大型個展。作家自身が選んだ絵画や彫刻、映像など日本初公開の新作を中心に構成される、現代アートファン垂涎の展覧会だ。

近年のオピーの作風は、ますます簡略化が進んでいる。たとえば《Walking in New York,1》などを見ると、人々の顔はただの丸だ。しかも「in New York」とあるにもかかわらず、彼らのファッション、歩き方、醸し出す雰囲気すべてにおいて、東京や大阪の人々を描いた作品と言われても納得できる。オピーはモチーフを徹底的に抽象化することで、世界中のどの都市にでもいる普遍的な人物像をあらわしているようだ。

ジュリアン・オピー《Walking in New York, 1》2019

 

没後60年
北大路魯山人
古典復興
—現代陶芸をひらく—

〜8月25日
千葉市美術館
☎043・221・2311

陶芸の古典復興を掲げ
食へのこだわりから作陶へ

自ら腕をふるった料理を盛り付けるために、ふさわしい食器を作陶した、「“美”を食す人」北大路魯山人(1883-1959)。本展では伝説の料亭「星岡茶寮」で活躍した彼の作品約120点に加え、大正から昭和に起こった「陶芸の古典復興」を支えた同時代の陶芸家たちの作品も紹介する。《横行君子平向(おうこうくんしひらむこう)》は、魯山人が74歳頃に制作した晩年の代表作。俳画のような味わい深い作品だが、ここにカニ料理が盛られたのかどうか、やはり気になるところだ。

北大路魯山人《横行君子平向》1957(昭和32)年 八勝館蔵