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 それからまたどれほどの時が流れたのでしょう──。
 いまにも雨と風を引き連れてきそうな雲がたれこめた午後、郵便配達の青年がアダムの家のドアを叩きました。
「郵便です、アダムさん。封書ですよ」
 わざわざ封書であることが告げられたのは、それが配達員の彼にとっても、アダムにとっても、きわめてめずらしい一通であったからでしょう。
 青年の記憶が確かなら、彼がアダムの家に配達をするようになってから、これほどの封書を届けるのは初めてではないかと思われました。
「これほどの」
 と断りたくなるのは、選ばれた上質な紙が使われた封筒に、またとない深い海の色のインクで、アダムの家の住所と名前が記されていたからです。じつに惚れ惚れとするような筆跡で、青年にはその一通がアダムにとって特別なものになると、手渡した瞬間に分かりました。
 無論、アダムもまた受けとった封書に、「啓示」と呼応する何ごとかを感じていたのです。
 しかし、封筒の裏面に記された差出人の名前にも住所にも、まるで覚えがありません。「ジョイ」という名の女性で、ほのかに封筒からいい香りが立ちのぼってくるようであったのは、錯覚だったのでしょうか。
 
 それは、アダムの投稿を読んだという、あの通販雑誌の読者から届いたものでした。
「あなたの投稿を、わたしに与えられたひとつの啓示のようなものとして拝読しました」
 そう書いてあったのです。
 アダムは最初、何が起きているのか理解しかねました。
 しかし、封筒と同じうるわしい筆跡によって、便箋八枚にもわたって書かれた文面に引き込まれ、そこにはまた驚くようなことが、いくつも記されていたのです。