イギリス在住のブレイディみかこさんが『婦人公論』で連載している好評エッセイ「転がる珠玉のように」。今回は「できるかな。久々の帰省」。3年ぶりの日本行きは多難を極め、壮大なギャンブルのように思えてきて――(絵=平松麻)

うまくいかないことだらけの帰省

コロナ禍で長らく帰省することのなかった日本に行くことにした。以前なら、気軽にチケットを予約して、当日はスーツケースを持って空港に行き、機上で酒を飲んで寝ていたらあっという間に日本、という感じで何も考える必要がなかったので、ギリギリまで仕事ができた。

ところが、今回は違う。いろいろ準備することがあり、うまくいかないことだらけで仕事が手につかない。

まず、ウクライナ紛争のため航路はロシア上空を避けることになり、以前なら12時間弱しかかからなかったロンドン―東京間の飛行時間が数時間も長くなる。ということは、一緒に予約していた東京―福岡間の国内線への乗り継ぎに間に合わなくなるではないか。なぜ航空会社は、ネットでチケットを買ったときにこの国際線と国内線の組み合わせをおすすめしてきたのだろう。無理なセット販売ではなかろうか。

と思いながら当該航空会社のカスタマーセンターに電話してみると、これが繋がらない。しかも、先方は営業時間を短縮していて、10時から15時の間しか電話できなくなっている。さらに言えば、(こういうことが最近多いのだが)チャラチャラチャララーンみたいな爽やかな音楽や「しばらくお待ちください」という音声すら聞こえない。呼び出し音が4回鳴ったら、ガチャッと切れる。