撮影:清水朝子
2時間ドラマやバラエティ番組など、テレビで引っ張りだこの山村紅葉さん。実は、元国税調査官という意外な経歴の持ち主です。「私の人生はずいぶんと母の影響を受けている」と語る彼女が、母の推理作家・山村美紗さんの享年に近づき、これから先の人生について思うこととは──

女優という定年のない人生を選んで

私にとって今年は50代最後の年です。幼稚園から高校まで一緒だった旧友たちのあいだでは、還暦を迎えるオリンピックイヤーに盛大な同窓会を開こうと盛り上がっています。「人生の第一幕は終了、お疲れさまでした!」と乾杯しながら、第二幕の始まりを告げる高らかなファンファーレの音を聞く。そんな華やかな気持ちで60代を迎えるぞ、と今からワクワク。人生のセカンドステージがどんなものになるのか、とても楽しみです。

同窓生にはさまざまな職業の人がいますが、会社員や教員になった人の多くは定年間近。パートナーが定年を迎える専業主婦もいるので、昨年行われたプチ同窓会でも、定年後の話で持ちきりでした。夫婦でのんびり暮らしたいという人もいるし、元気なうちにゴルフやダイビングを楽しみたいと張り切っている独身女性のグループも。

いずれにしても、誰もが用意周到なことに驚きます。定年後に備えて貯金をしていたり、家のローンを払い終えていたり……。女友達の一人は、「退職金や年金は老後の生活費だから、そのほかに遊びに行くためのお金が必要」と、若い頃から積み立てをしていたそうなのです。60歳から毎月入る7万円ほどのお金はレジャー用としてプールし、半年ごとに海外旅行へ行く計画なのだと聞いて、「お見事!」と感嘆してしまいました。

私はといえば、何も考えていません。同窓会の席でも、「これからどうするの?」と訊かれて、「今日はもう飲めないから帰るわ」と答え、「お酒の話じゃなくて仕事の話だよ」と苦笑されてしまう始末(笑)。女優には定年がないのでピンと来ないというのが正直なところなのです。

そのうえ、私には趣味がありません。着物が好きなのですが、購入するときも、「次のドラマで使えそう」「バラエティ番組で着ようかしら」と仕事目線。着物が好きというより、仕事のことを考えるのが好きなのです。

母に似てきたなと感じます。母も仕事人間でした。私と旅行をしていても、パトカーを見かけると夢中になって写真を撮りまくっていたりして。母にとって仕事が生き甲斐だったように、私も仕事がなかったら、生きる気力を失ってしまうことでしょう。