結婚当初、私はどうしても子どもがほしかったので、努力もしました。転勤先の博多にいる夫に、「今から飛行機に乗るけど、3時間50分後に卵が出るから、ちゃんと定時で帰ってきてね」と連絡したことも。残念ながら子宝には恵まれませんでしたが、子どもが生まれていたら、女優は確実に辞めていたでしょう。夫とも、二人きりだからこそ生まれた強い絆があるように思います。

「流れに身を任せて生きる」というのは、考えなしに生きることではなく、運命を受け入れるということ。そうすれば、たとえつらいことがあっても乗り越えることができるし、新たな希望も見えてくる。だから私はこれからも、しなやかな心を持って生きていこうと決めています。

 

「センスがあるから喜劇役者を目指しなさい」

92年に放映開始のドラマ「山村美紗サスペンス赤い霊柩車」シリーズで、私は葬儀社の事務員役を務めています。専務役の大村崑さんと初めて共演したときに、「あんたは美人女優とは言えないけれど、センスがあるから喜劇役者を目指しなさい」と言っていただいたことが、女優としての転機になりました。崑さんからご指導を受け、コミカルな女優・山村紅葉が生まれたのです。

近年になってバラエティ番組に出演する機会も増え、笑いをとることの楽しさをみしめています。でもお笑い芸人さんの面白さには太刀打ちできないなぁ。いや、太刀打ちするつもりなのか?という話なのですけれど(笑)。「笑い」は人間関係の潤滑油ですが、相手に笑いを提供するために必要なのは、技術ではなく、思いやりの心。「相手に笑ってもらうためなら馬鹿にもなる」という優しさが基本だという気がします。

母が他界したとき、私は悲しみの底にいましたが、何気なくテレビをつけたらコントをやっていて、見ているうちに笑っていました。笑っている場合じゃないと思ったけれど、すごく救われたのです。私も人の心を救うことのできる人間でありたいし、女優としても「おかしみ」を大切にしていきたいと考えています。