「あの列」から政治的解釈や逸話が生まれた

長い列の要所要所に警官が立っていて、「あと5時間!」「あと2時間!」と叫んでいたらしいが、これにしても、とてもデジタル時代とは思えない。どうして待ち時間の長さをスマホで確認できるようにして、10分前に現地に来ればいいようにしなかったのか。ロックダウン中、オンラインショッピングのサイトに人が集中してアクセスできなかったときにはそうなっていたぞ。

しかし「あの列」の現場では、「あと〇時間!」と叫ばれるたびに、人々はため息をつくどころか、「おおーっ」という喜びと連帯の声を上げていたという。それを思い出しながら話す知人の顔も、まるで休暇旅行の話でもするように高揚している。誰かの死を悼んだ経験と呼ぶには、明るい。

「あの列」からは、さまざまな政治的解釈や逸話が生まれた。「ナショナリズムの高まり」「全体主義の予兆」という真面目なものから、「列に並んでいる間に誰かと恋に落ちて交際が始まった」というほっこり系まで、実にさまざまだった。

「あの場を包んでいた空気は特別なものだった。厳かで、温かくて、浮世ばなれしていた」

知人は夢見るような顔でそう言った。「浮世ばなれ」なんて言葉を聞いたせいか、こういうことをしゃべっていると、「あの列」は何らかの尋常ではないエネルギーの化身だったのではないかという気がしてきた。