
概要
旬なニュースの当事者を招き、その核心に迫るBS日テレの報道番組「深層NEWS」。(月〜金曜 午後10時から生放送)読売新聞のベテラン記者で、コメンテーターを務める飯塚恵子編集委員と、元キャスターの吉田清久編集委員が、番組では伝えきれなかったニュースの深層に迫る。
ウクライナ侵略や円安によるエネルギー危機が深まる中、岸田首相は原発の新増設や再稼働推進を目指す方針を表明、政府は年内の結論とりまとめを急いでいる。その背景と課題は──。東京大学の小宮山涼一教授、国際環境経済研究所の竹内純子(すみこ)理事をゲストに迎えた9月1日の放送を踏まえて、編集委員2氏が語り合った。
原子力政策転換への課題
エネルギー確保に暗雲
「ウクライナ危機などでエネルギーの確保は安全保障上の大きな問題になっている。加えて国内では火力発電所の廃止が続いており、この冬のエネルギー供給も危うい。原子力政策の見直しが求められるギリギリのタイミングになっている」=竹内氏
「原発の新増設や運転期間延長がないと、日本の原子力発電容量は2030年の約3700万キロワットが70年には原発3、4基程度の約400万キロワットにまで低下する。岸田首相の決定は、長期的な原子力活用への第一歩だと受けとめている」=小宮山氏
吉田岸田首相は8月末、来夏以降に新たに7基の原発の再稼働を目指す一方、「最長で60年としている運転期間の延長」「次世代原発の開発・建設」を検討するよう指示を出しました。これは「原発の新増設は想定していない」などとしてきた従来の政府の姿勢を転換するものと言えます。その背景には、短期的にも長期的にも原発抜きでは電力の安定供給が見通せない日本の現実があるのでしょう。

飯塚エネルギーの安定調達は今や世界的な政治問題です。これまでロシア産天然ガスに頼ってきたドイツなど欧州諸国は、ウクライナ危機でエネルギー不足に。日本も、かつて主役だった火力発電所は老朽化し、ロシア絡みのエネルギー開発事業「サハリン1」「サハリン2」も露政府に主導権を握られ、不安定さが増しています。岸田首相は就任当初、原発の新増設は世論の懸念が強いこともあって慎重でしたが、想定外の国際情勢の変化を受け、方針転換を迫られました。
吉田原発の再稼働が進まなければ日本は火力発電に頼らねばなりません。しかし、火力発電所は近年休廃止が進み、最近の円安で発電燃料の輸入価格が高騰、電気代負担は家計を直撃しています。国民の生活を守る責任がある政府としては原発再稼働を進めざるを得ないと考えます。
飯塚再生可能エネルギーの開発も重要です。ただ、例えば脱原発を打ち出したドイツでも、再エネの主力として期待されていた風力発電が近年伸び悩んでいます。技術面での安定性確保が課題となっている上、風車の設置に地元の反対が続き、政治的にも壁が増えている。安定性という意味でまだ課題が多いようです。
