「正直に言えば、今でもその感情はよみがえってきます。でも、解決できるようになりました。」(堀さん)(撮影:鈴木慶子/写真提供:ビジネス社)
2019年1月にステージ4の舌がんと宣告を受け、舌の6割以上を切除する大手術を受けたタレントで歌手の堀ちえみさん。一命はとりとめたものの、言葉に障がいが残ってしまい、一時は絶望に沈んでいたと言います。しかし、家族や多くの人々の励ましに支えられ、リハビリに励み、2020年1月より仕事に復帰しています。
がん専門の精神科医・清水研先生との対談という形で、その体験を振り返る堀さん。舌がんの手術後、退院前の検査で食道がんが見つかった時、なんとか頑張っていこうと自分自身を盛り上げていた気持ちが折れ、自制心を失い、色々な怒りや悲しみの感情が押し寄せたと言います。そんな気持ちも、時間を経て落ち着いていき――。

夫の怒りによって救われた、私の怒り

清水 がんを発見してもらえなかったことへの怒りについて、今は気持ちに折り合いがついていらっしゃるのでしょうか。

 そうですね、折り合いをつけました。がんが舌にできて、あのときに見つかり、手術をして除去できた。言語障がいは残りましたが、命は助かったんだから、これは運命だったんだと思うことで、自分の心を《片付け》ました。

と言いつつも、手術後は怒りや悔しさのほうが圧倒的に勝っていました。早期発見ができていれば、ここまで言語に障がいが残らなかったわけですし。

その後も、しゃべりづらい自分がもどかしくて、しんどい思いをしました。早期発見してもらえてステージ4まで行かなければ、がんであることを公表もしないまま手術して復帰できていたかもしれないよねって。「たられば」を言っても仕方ないのですが、幾度となくそのことは考えてしまいます。

清水 「片付けた」とおっしゃいましたが、その境地へたどりつくにはかなりの葛藤があったと思われますが。

 確かに言語の障がいが残ったことが大きいですからね。正直に言えば、今でもその感情はよみがえってきます。でも、解決できるようになりました。きっかけは、主人との言い合いでした。

清水 けんかされたんですね。詳しく教えてください。