来る2023年、中公文庫は創刊50周年を迎えます。その記念プレ企画として、本連載では「50歳からのおすすめ本」を著名人の方に伺っていきます。「人生100年時代」において、50歳は折り返し地点。中公文庫も、次の50年へ――。50歳からの新たなスタートを支え、生き方のヒントをくれる一冊とは? 第28回は、冒険家・プロスキーヤーの三浦雄一郎さんに伺います。

三浦雄一郎(みうら・ゆういちろう)

1932年青森県生まれ。64年、イタリアでの滑降時速を競う「キロメーターランセ」に日本人として初めて参加し、当時の世界新記録を樹立。85年、世界七大陸最高峰のスキー滑降を完全達成。2013年には80歳にして3度目のエベレスト登頂を果たし、世界最高年齢登頂記録を樹立。クラーク記念国際高等学校名誉校長。

自然と向き合う二人の出会い

私が子どもたちを連れてアラスカのキャンプへ行ったとき、アンカレッジの空港で偶然、開高さんにお会いしたことがあります。開高さんとはそれ以前にも、対談や食事をする機会が何回かありました。

飛行機を降りてから迎えの車がくるまで一時間近く、お互いに夢中になって話をしました。開高さんはそのときも釣りの話をしていました。


もともと私は開高さんのファンで、最初に読んだのは『ベトナム戦記』(1965年、朝日新聞社)。戦争体験が衝撃的で、それ以来多くの作品を読んでいます。『オーパ!』(1978年、集英社)は、大自然の中で怪魚を釣る、スケールの大きさが魅力です。アマゾン河に始まり、「アラスカ篇 カリフォルニア・カナダ篇」「アラスカ至上篇・コスタリカ篇」「モンゴル・中国篇 スリランカ篇」と長い旅が続きます。


なぜこの本を薦めるのかといえば、開高さんの文章は日本語の表現が素晴らしく、感性や心を高揚させてくれます。読むと生きる力がわいてくる、そんな作品が多いのです。

とくに「オーパ!」はユーモアが利いているし、比喩が面白い。日本語が絢爛豪華に表現されていて、ほんとうに素晴らしいと思います。私とは違う視点ですが、自然が相手という点では共通しています。

私は現在、病気の後遺症による頸椎損傷のリハビリ中で、本はあまり読んでいないのですが、開高さんの本なら1章でも1ページでも、思いつきでパラパラ眺めるだけでも楽しい。読むと元気が出てきます。