概要

旬なニュースの当事者を招き、その核心に迫るBS日テレの報道番組「深層NEWS」。(月〜金曜 午後10時から生放送)読売新聞のベテラン記者で、コメンテーターを務める飯塚恵子編集委員と、元キャスターの吉田清久編集委員が、番組では伝えきれなかったニュースの深層に迫る。

9月末のイタリア総選挙で、極右政党「イタリアの同胞」が第1党に躍進し、ジョルジャ・メローニ党首がイタリア初の女性首相に就いた。なぜ欧州でポピュリズムが再燃するのか。東大大学院の伊藤武教授と第一生命経済研究所の田中理(おさむ)・主席エコノミストをゲストに迎えた10月4日の放送を踏まえて、編集委員2氏が語り合った。

イタリア極右総選挙で勝利

ポピュリズム再燃

「イタリア国民の間に既存政党に対する幻滅があると思う。色々な政党に政権を任せたけど、暮らし向きはよくならない。だったら、一度任せようと考えたのではないか」=田中氏

「欧州における主流派は穏健で国際協調的な中道勢力だった。しかし、2015年の難民危機以降、急進的な勢力が政治に不満を持つ人たちの支持を得て伸びてきている」=伊藤氏

飯塚メローニ氏は10月に政権を発足させました。国の方針を大きく変えることはしないと言っていますが、注意して見ていく必要があります。今回の政権交代の背景には、大衆迎合的なポピュリズムの再燃があります。欧州では2015年、シリアやアフリカから多くの難民が流入して、社会や経済が混乱しました。欧州連合(EU)の一員として難民の受け入れに対応するより、自分たちの国を優先して、暮らしや安全を守りたいという動きが強まりました。これに、新型コロナウイルスの感染拡大による社会の疲弊、ロシアのウクライナ侵略による物価高などの危機が加わり、自国第一主義は欧州でさらに高まる恐れがあります。

イタリア”極右”メローニ新首相へ©️日本テレビ

吉田フランスで極右政党を率いたマリーヌ・ルペン氏は4月の大統領選でマクロン大統領に敗れたものの、決選投票の得票率は4割を超えました。9月に行われたスウェーデンの議会選でも、反移民を掲げるスウェーデン民主党が2番目に多い議席を獲得しました。欧州では、急進的な主張が「自分たちは置き去りにされている」という政治への失望の受け皿になっているのではないでしょうか。メローニ氏もイタリア・ファーストを訴えて、移民の受け入れに反対しています。LGBTQ(性的少数者)の擁護にも反対して支持を広げたようです。一方で、EUとの協調関係は維持する、先進7カ国(G7)の一角として対露制裁も継続するとしています。それぞれの望むところに八方美人的に政策を打ち出すやり方に危うさを感じます。

45歳で初の女性党首へ…手腕は?©️日本テレビ