日本の草花を四季に応じて紹介する『日本の花を愛おしむ 令和の四季の楽しみ方』(著:田中修 絵:朝生ゆりこ 中央公論新社刊)から、身のまわりの植物クイズを出題。今回のテーマは「【木瓜】」です。

ウリのような実をならせる木
この植物は、平安時代の初期に中国から日本に渡来したといわれます。観賞用の植物として、鉢植えや庭木として栽培されてきました。「春告草(ハルツゲグサ)」とよばれるのはウメですが、この植物は、「放春花(ホウシュンカ)」とよばれます。
この植物は、暖かくなりはじめると、葉が出るより先に花を咲かせはじめます。咲いた花は、明るくあざやかな紅色をしており、緋色(ひいろ)と表現されることがあります。近年は、花が白色やピンク色などの品種も出まわっています。まれに、一つの花の中に、紅色と白色の入り混じった花が咲いているものもあります。いずれの花も、明るい春の香りを放っているように感じられます。そのため、「放春花」という名前をもっているのです。
「ボケ」という、この植物の名前を耳にすると思わず、「なぜ、こんな名前になったのだろう」と考えてしまいます。でも、《ボケ》という音は同じですが、私たちが考えなければならないような深い意味はありません。
この植物の果実の姿は、ウリの果実に似ています。そのため、ウリのような実をならせる木という意味で、漢字名は、「木瓜」と書かれます。「木瓜」は、「もっけ」や「もけ」とよばれて、それが「ボケ」と訛(なま)ったといわれます。「ぼっくわ」と読み、この音から「ボケ」になったという説もあります。
ボケの学名は、「カエノメレス スペシオーサ」で、「スペシオーサ」は、ギリシャ語で「美しい」や「はなやかな」を意味します。属名の「カエノメレス」は、「裂けたリンゴ」や「口を開けたリンゴ」を意味します。果実の形が、球形か楕円体で、リンゴのように見えるからです。
日本では、リンゴではなく、ウリの果実にたとえられて「木瓜」なのです。