いまこうして書きながら、恐怖がよみがえり気持ち悪くなる。

もちろん、ホストクラブ行きは吹っとんだ。

私の指名を受けていたホストは、私のお客さまを楽しませるべく、その席に着くメンバーを調整し、やる気まんまんで私たちの到着を待っていただろう。申し訳ないことをした。
ここまでこれを読んで、読者の方は少々ギモンに思われたかもしれない。

そう、こと組織のなかでお仕事をされている方ならきっと、思われるだろう点が一つ。

「後輩がタクシーを捕まえに行くんじゃないの?」

……ですよねぇ。フツウは後輩が先に出て、通りでタクシーを捕まえようとするでしょ。
私は後からゆっくり落ち着いて、お客さまと一緒にお店を出ればよかったのです。

そうでなくても土砂降りのなか、無茶な突撃をすることなどなかったのだよ。

でも私は率先して、やった。後輩の気が利かなかったわけではなく、彼女がサボっていたのでもなんでもなくて、私が勝手に前へ出た。

自分のそんな行動が、いったいどこから来ていたのか。

新人の頃からずっとボスのそばで、ボスを見てきたからである。

作家先生と移動するとき、エレベータに駆け寄って、先にボタンを押すのはボスだった。現場でいちばん下っ端の人のように、走る。そう、〈著者ファースト〉の源流は、ボスなのだ。ボスから先輩へ、先輩から私へ。私も後輩にタスキを渡すべく、生きていた。

作家に時間をもらうと、場所の選択、店の予約を即、やる。店に着くのもいちばん乗り。作家に気を配りつつ席やメニューも次々決めて、なんでもかんでも先回りする。部下はその速度になかなか追いつけなかった。かといって、部下を責めなかった。

そんなボスの子分だったというのに、あの瞬間に、私は傲慢だった。誰もそのことを知りえない。けれど、神様は見ていた。