イラスト:飯田淳

会社では、いつも誰かを怒っていたボス。それも
ボスのエネルギー源だと受け入れた私だが、
テレビ局勤務のルリさんは
とにかくしごかれたというつらい新人時代を振り返る

第23回 怒鳴られっぱなしの会社人生

〈株式上場〉への道を選んだ会社は、右肩上がり人生を歩みはじめた。

私たちは「もっと、もっと」大きくなろうとしていた。人も本も増えていく。

本の刊行点数が増えるとともに、作品への問い合わせも増えた。

「○○の権利、あいていますか?」

新刊(主に長編小説)を出すと、そんな電話を受けることがあった。

電話をかけてくるのは、その本の中身をテレビドラマ化・映画化したい人物だ。テレビ局や映画会社、またはそれらの制作会社、のプロデューサーなどである。

〈一般書の編集者〉である私は、そこで〈作家のマネージャー〉に変身する。企画者と原作者の間に入って、さまざまな調整をする。

まず、本の著者に訊かねばならない。

「本を映像化したいって人がいますけど、どうします?」

それに対して、多くの著者が前向きだった。映像化されることによって本はあらゆる広がりをもつ。

ところが消極的な著者も、まれにいた。自分の著した世界が損なわれることを懸念しているのか。

「映像にできないことを、苦労して本に書いているんだ、なんでわざわざ映画やドラマにしなきゃならないんだ?」

まあそれもそうだよなと思うけれど、出版社はぜひとも映像化を実現したい。その宣伝効果が大きいからだ。現在は以前ほどでもないのかもしれないが、私が編集者をしていた時分には、映像化で売れ行きがグンと伸びることが多かったのである。

「本が売れる」が何よりの幸せであったことは、すでに書いた。「本が売れる」をボスは喜ぶ。それがすなわち、社員の喜び。ほかに幸せなことなどなかった。

そんなわけで、ぜひとも映像化オッケーと言ってほしい。

あの手この手で著者を懐柔。プロデューサーが好感のもてる人物であれば、まずは直接会ってもらうのもいい。「なぜこの本に惹かれたのか?」、そして「なぜこれをテレビドラマや映画にしたいのか?」を彼らに熱く語ってもらうと、ぜんぜんちがう。著者は、担当編集者には褒められ慣れているので、新しい登場人物である映像化の話を持ってきた人が作品を分析し、フレッシュな感想を聞かせてくれることで、それが突破口になったりもする。