さて。当連載では、平成元年に私がボスと出会い、出版業界で仕事してきた日々を、バブル期に重ねて綴っている。同時に、同じ頃社会に出た、同世代の働く女性たちのインタビューを交えながら、書いてきた。

平成が終わる。会社も終わる。始まったものはいつか終わる。始まりは終わり。終わりは始まり。右肩上がり人生を生きて、そこから降りることを許されない――気がしてしまうのも、バブル世代の幻想にすぎないといまは思える。

バブル期を謳歌した「彼女」たちが働いた平成という時代、それぞれの会社にはボスがいて、支えてくれる仲間がいて、安定した収入があった。けれどそれがずっとつづくわけではない。「特定郵便局」も、前はあったがいまはない。代々世襲制、国家公務員としての身分、局の維持費などといった面で国からの処遇は恵まれており、それに一部批判はあったものの、その仕事に最大の感謝をもって〈まじめひとすじ〉で働いてきた人もいるわけで。私のかかわった映画で描かれたのはそうした人物だったが、一方で、既得権に溺れた人たちも含めて、郵政改革という名のもとでは、みな一様に〈出直し〉となった。

大手テレビ局勤務のルリさん(48歳・既婚)は、テレビドラマやバラエティー番組をつくってきた。前号につづいてお話を伺っていこう。今回の「彼女」はこれまで登場したどの女性よりも、編集者だった筆者と近いところにいた方である。

――ルリさんも私も作品づくりの現場にいたわけですが、私の場合はボス直結という、わかりやすい組織で仕事をしてきました。でもルリさんのように大企業のなかでやりたいことをやる、才能を発揮するというのは、おそらく並大抵の大変さではありませんね?

「いえ、私なんて……。大失敗もいっぱいしていますし、もうちょっと大人になれよって、いまも言われます。

ただ、男脳では考えられないようなアイデアを出して、感性が違っていたところが、ほんとラッキーなことに、ちょっと目立ったのかもしれません。初めのうちは、AD(アシスタントディレクター)が発言するなんて百年早いとか、いろいろ言われながらやっていましたが、パンッといきなりなにかを振られても、ぜったい答えを用意しておこうって決めて。まだ女性のADはチラホラしかいなかったので、じゃあ女の意見を聞いてみようってなったときに、こういうアイデアはどうでしょうか? と必ず答えられるようにした。

それを続けていったら、いつのまにか『おばちゃん感覚はアイツに訊こう』とか、『こういう企画ならルリじゃない?』っていうふうに、先輩たちからチャンスをいただけるようになっていったんですね。そのうち『おまえってこういうヤツだよね』『きみってこういう思考性の人だよね』と、知らないうちにまわりの人が、私の個性を作り上げてくれた」