――そうですよね、そうやって人は仕事ができるようになっていくのでした、思い出してきました(笑)。クリエイターとしての自分の能力なんて、自分で考えたり決めたりするものではないと、私も学生たちによく言ってます。いま私はルリさんとこうして会いながら、ああそういえば仕事のできる人ってこういう感じだったな……って、思うんですよ。

「ダメだ、こんなもの! って会議でボカスカやられても、どうしてもこれをやりたいという熱意を拾ってくれる先輩には、出会っていけたんです。10回言ったら、わかったよってやらせてくれたり。少し離れたところから思わぬ誰かが見ていてくれたり。人間関係にはずっと恵まれてきたんですね、40超えるくらいまでは」

――初めて同僚や上司との人間関係で苦しむようになったのが、その頃なんですね?

「好きで好きでたまらなかった制作の仕事を廃業したいと、初めて思いました。というのも、男性社会のいやらしさというか、足の引っ張り合いのようなものが……」

――しかも、その苦しみはしばらくつづいた。男性と肩を並べて仕事していくことが、なんだかむずかしいゾーンに入っていくのですよね、その年頃になると。私も、好きで好きでたまらなかった編集の仕事を廃業したいと、初めて思ったのがやっぱり40過ぎでしたねえ……。

「ほんとですか!? センパイ(笑)」

――ええ。そうなんです。で、廃業しました。43歳で出版社を退社するんですけどね。

ここでインタビューに立ち会っていた『婦人公論』元編集長のM氏(ボス社勤務時代の私を知っている)が口をはさんだ。

「ミルコさんが会社をやめたときは、ほんとうにびっくりしたよねえ……」

――自分でも仕事を、いや会社をやめる気なんて、それまでさらさらなかったんだもん(笑)。〈会社=自分〉みたいなところが、ずっとありましたからね。

「四十いくつまではイケイケの花形プロデューサーという二人は、なんか似ているよね」と、M氏。

――私のほうは退路を断って新しいことをやるって決めて、いま第二の人生中(笑)。会社をやめて、〈何者でもない自分になった〉と思ったんですよ。それはもうじつに清々しいもので。以前は〈ボスのもとにいる私〉でしたからね。きっとルリさんも、あきらかにいっこ終わったんですよ。だって、好きで好きでたまらなかった仕事をいやになった。それだけのことが、あったということですよね? だから前の時代はもう終わり。終わりは始まり。あ、まだ会社やめていなかったですね(笑)、スミマセン。

「いえ、もう私のなかでは転職したも同然……先だって異動願いを聞き入れてもらえて、実質、出向という2つ目の人生のチャンスをいただけたことはとてもよかったのです。でないと、精神を保てなかった。それくらい、苦しい時間を過ごしてきたので」