偏らない空間に

「学習させる文章次第で、偏った思想の対話型AIを作ることもできる。言論空間を特定の方向に寄せることができるため、世論を操作したい強権的な国に好都合だ」=佐藤氏

「技術の黎明期なので問題点は出てくるだろうが、試しにどんどん使って可能性を感じてほしい。最先端の技術がこれほど触れやすい形で登場することはあまりない」=松尾氏

飯塚番組では、佐藤氏はこのツールの心配な側面を指摘し、一方の松尾氏はもっと活用するよう積極論を展開しました。米欧でもその評価は百家争鳴です。チャットGPTが人を差別するような回答をしないのは、そう答えないよう学習させているからです。別の視点を大量に広めれば、だんだん影響されていく、ということです。

中国も米国に追い付こうと、対話型AIの開発を進めています。中国では共産党を批判するようなインターネット上の書き込みは検閲されて、すぐに削除されます。そうした環境で学習すれば、偏った空間ができ上がるでしょう。そのようなツールなのだ、と認識しておく必要があります。

中国も「対話型AI」開発に注力©️日本テレビ

吉田新しい技術なので、悪用されない対策やルール作りが求められます。個人情報を入力させて盗み取る「フィッシングメール」を作成できることなどが指摘されており、対策は講じられるでしょうが、犯罪に利用される恐れは残ります。利用者が入力する質問もAIの学習に使われるため、個人情報の慎重な取り扱いが必要です。

3月には、画像に文章を添えて質問することもできる「GPT―4」が発表されました。技術革新の速さに私たちは追い付けていないようです。米欧では規制を求める動きも出ています。対話型AIのポジティブな面を生かしながら、ネガティブな面をどう減らしていくのか。向き合い方を一度考えてみるべきではないでしょうか。

解説者のプロフィール

飯塚恵子/いいづか・けいこ
読売新聞編集委員

東京都出身。上智大学外国語学部英語学科卒業。1987年読売新聞社入社。 政治部次長、 論説委員、アメリカ総局長、国際部長などを経て現職。

 

吉田清久/よしだ・きよひさ
読売新聞編集委員

1961年生まれ。石川県出身。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。1987年読売新聞社入社。東北総局、政治部次長、 医療部長などを経て現職。

 

提供:読売新聞