概要

旬なニュースの当事者を招き、その核心に迫る報道番組「深層NEWS」。読売新聞のベテラン記者で、コメンテーターを務める伊藤俊行編集委員と、元キャスターの吉田清久編集委員が、番組では伝えきれなかったニュースの深層に迫る。

ロシアのウクライナ侵略に終わりが見えない。ロシアは米欧の支援を受けるウクライナの抵抗にあっている。ロシアとウクライナは次の一手をどう考えているのか。ロシア社会はプーチン大統領支持でこれからもまとまれるのか。廣瀬陽子・慶大教授と小泉悠・東大先端科学技術研究センター専任講師を迎えた4月6日の放送を踏まえて、編集委員2氏が語り合った。

侵略の長期化ロシアの行方

ベラルーシに戦術核

「ウクライナの東側から南側にかけてが戦場だ。北側のベラルーシに戦術核を置くとすれば、純軍事的な要請ではなく、兵器を供与する米欧への牽制などが目的だろう」=小泉氏

「ベラルーシのルカシェンコ大統領としては、ロシアの侵攻に加わることは何とかして避けたい。どういう形ならロシアに協力できるのか。両国の間にせめぎ合いがある」=廣瀬氏

伊藤プーチン氏は3月、中国の習近平国家主席と会談し、「すべての核保有国は自国の領土を越えて核兵器を配備してはならない」とする共同声明をまとめました。プーチン氏は会談の直後、同盟関係にあるベラルーシに戦術核を配備することを発表します。ロシアの行動は矛盾していますし、中国から見れば背信行為に映ります。

中露首脳「国外の核は撤去」矛盾は?©️日本テレビ

しかし、米欧に対する政治的なメッセージを含んだ動きであれば、中国とある程度通じて行動している可能性も否定できません。ロシアも中国も核保有国で、国連安全保障理事会の常任理事国です。核拡散防止条約(NPT)を守らなければならない側の国です。こうした挑戦自体、国際社会にとっては受け入れられないことです。

吉田北大西洋条約機構(NATO)の核共有に対する、当てつけかもしれません。NPTが発効した1970年以前から、米国はドイツなどに戦術核を置いています。だからと言って、ロシアは核兵器を脅しの道具として使ってはなりません。ウクライナの隣国に核兵器を置くことは危険です。広島、長崎に原爆が投下されて以降、キューバ危機などもありましたが、戦争で核兵器は使われてきませんでした。広島、長崎の惨禍が伝えられてきたからです。戦術核の威力が低いことを理由に、使用のハードルを下げてはならないと思います。

中国はこれまで、ロシアの暴挙を批判せず、ロシアから原油などを輸入してきました。ただ、どこまでロシアに付き合うのか。核兵器まで容認していると見られるのは「まずい」と、習氏も考えているかもしれません。