繰り返す金銭トラブルにおかしいなと思い始めて

母を家に連れ帰って間もなく、私たちは転勤で引っ越すことになりました。今度はデイサービスとショートステイの利用を決めました。

母との同居は実に42年ぶり。もともと自己中心的なところがある人だと思っていましたが、一緒に暮らしてみるとわがままがとても目につくようになりました。私が作る食事に文句をつけたり、何かほしいと思ったら買うまでしつこく言い続けたり。

ある時、母は補聴器を修理しに行き、ついでに新しい眼鏡を注文してきました。ところができあがった眼鏡は、度数が何も変わっていないことが判明。収入は障害年金だけだというのに7万2000円もかかりました。

その後も2、3回こんな買い物があって、私は母の言葉や行動を疑い始めました。眼鏡屋さんには申し訳なかったのですが、「もう歳を取ってお金の計算ができないので、今後は家に連絡をしてください」とお願いすることに。

対抗する母のほうも演技に磨きがかかります。「あっちが痛い、こっちが痛い、お守り代わりにネックレスが必要なんだ」という具合。無視すると、腰が痛いからデイサービスに行けないとわめき、迎えの車が来る朝9時を過ぎるとスタスタ歩く。怒鳴ってもなだめても、何の効果もありません。

すっかり嫌になってスーパーで買い物をしていた時のこと。以前、近所に住んでいたU子さんにばったり会いました。聞けば、彼女は姑との生活に耐えられなくなって、自身が精神科に入院していたというのです。まだ症状が軽かったので2週間で退院し、娘のところに身を寄せて、その間に姑にはグループホームに入ってもらった、と。

みんな老親にお手上げ状態なんだ……。私も意を決して、母を病院に連れて行きました。テストの結果、認知症との診断。ケアマネージャーには、人の名前を覚えられるし、生年月日も言えるから、認知症ではないと言われていました。しかし母の場合は側頭葉に明らかな萎縮があり、社会性が失われていくタイプの認知症だったのです。

診断後、母に対する自分の気持ちに変化が生まれました。病気なのだから、もう本気で怒っても仕方ないと思えるようになったのです。もうヘトヘトではあるのですけれど。

これから私たち家族が母にしてあげられることは、まず米寿のお祝いでしょうか。母、86歳。今日も生きる気力に満ち溢れています。
 


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