エドゥアール・マネ《フォリー=ベルジェールのバー》1882年油彩、カンヴァス96×130cm コートールド美術館 ©Courtauld Gallery(The Samuel Courtauld Trust)

 

2019年後半、絶対に見逃せない展覧会

イギリスが世界に誇る印象派とポスト印象派の殿堂、コートールド美術館。本展「コートールド美術館展 魅惑の印象派」はこのミュージアムから、美術書でもお馴染みの絵画・彫刻約60点を紹介する。

1932年に開館したコートールド美術館のコレクションは、人工シルク(レーヨン)の製造で巨万の富を得たサミュエル・コートールドが、妻のエリザベスと築いた作品群である。31年にエリザベスが亡くなったため収集の大半は9年ほどのことだったが、2人の審美眼は確かなものだった。

館が誇る2大看板が、《フォリー=ベルジェールのバー》と《桟敷席》だ。前者はマネが亡くなる前年に描いた最後の大作で、病に侵されていた彼が、自らのアトリエに人気のダンスホール「フォリー=ベルジェール」のバーカウンターを再現し、実際のバーメイドを店から呼んでポーズをとらせたという。当時バーメイドは売春婦を兼ねることが多かった。喧騒の中でぼんやりと注文を待つ女性の姿に、現代にも通じる人間の孤独を感じさせる作品だ。

ピエール=オーギュスト・ルノワール《桟敷席》1874年油彩、カンヴァス80×63.5cm コートールド美術館 ©Courtauld Gallery(The Samuel Courtauld Trust)

一方の《桟敷席》は、第1回印象派展に出品されたルノワールの初期の代表作である。19世紀後半、観劇はパリ市民の生活の一部となっていた。中央の女性は、「鼻ぺちゃ」と呼ばれた、ルノワールの当時のお気に入りのモデル、ニニ・ロペス。彼女は高級娼婦のような装いで桟敷席に陣取り、その後ろでは、画家の実弟エドモンが、オペラグラスで客席を観察するブルジョワ男を演じている。

どちらも「超」がつく傑作だが、ほかにも本展では、ドガの踊り子や、ゴーガンのタヒチの女性たちなど、素晴らしい作品が目白押しだ。2019年後半、絶対に見逃せない展覧会のひとつである。

 

 

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「内なる美」を求めて

38年という短い生涯でありながら、日本の近代美術の歴史において最も独創的な道を歩んだ孤高の洋画家、岸田劉生(りゅうせい)(1891-1929)。没後90年を記念して開催される本展「没後90年記念 岸田劉生展」は、150点以上の作品で彼の全貌に迫る展覧会である。

17歳で黒田清輝(せいき)が主宰する白馬(はくば)会洋画研究所に学んだ岸田劉生は、1912(大正元)年には「個の表現」を模索して高村光太郎らとヒュウザン会を結成。その後は、ミケランジェロやデューラーなど、西洋の古典絵画を発見して独自の写実方法をつきつめ、15年、24歳の時に「草土(そうど)社」を立ちあげ、対象の内面にまで分け入るような「内なる美」を探求した。

その前年に生まれた長女が麗子である。彼女は、劉生がことあるごとに描いたことで知られるが、とくに《麗子肖像(麗子五歳之像)》は、連作の最初の作品として注目される。麗子本人も、父の気持ちに「何か特別なものがあった気がする」と後に記した力作だ。

岸田劉生《麗子肖像(麗子五歳之像)》1918年10月8日 東京国立近代美術館

 

 

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絵画、歴史資料から仏像まで
世界トップレベルの修復技術!

2021年に創立30年を迎える住友財団の、文化財維持修復に関する助成事業を紹介する。17年度までに住友財団が助成を行ってきた国内外累計1063件の事業のうち、京都(泉屋博古館〜10/14)、東京(泉屋博古館分館〜10/27、東京国立博物館10/1〜12/1)、福岡(九州国立博物館〜11/4)の4会場で、異なる名品を展示。世界最高水準の文化財修復技術とともに、数々の大地震で被災した文化財の状況報告も。

大日如来坐像平安時代(12世紀)京都・浄瑠璃寺蔵泉屋博古館(京都)にて展示