(写真はイメージ/写真提供:photo AC)
なぜ6年間に必ず1度やらなければいけないのか? なぜ仕事をしているとわかっているのに平日日中に活動するのか? 保育園のとき、あんなにたくさんいたお父さんはどこへ行ったのか――。PTAの〈クラス役員決め〉を経験した時、その理不尽さに憤慨したというのがノンフィクションライターの大塚玲子さん。それから「同じようにつらい思いをする人をなくしたい」と考え、10年以上PTAに関する取材を続けています。今回はそんなPTAの理不尽の一つ、「ポイント制」について。役員決めが早く済むので一見よさそうに見えますが、弊害も多いそうで――。

摩訶不思議PTAの「ポイント制」とは

《PTAの「ポイント制」経験者の声》

●本部役員が全保護者会員のポイントを事前にチェック。役員決めの当日、立候補がいなければ、一定のポイント数に満たない人からクジ引きになる。(ゆるりとつながり隊さん)

●ポイント制のルールが複雑すぎて、集計する人の手間がかかる。(とりさん)

●毎年、自己申告のポイント数を一覧にして、各クラスで委員の投票をする。申告の提出が遅れるとポイントがゼロに。高学年になると自然と低ポイントの人に票が集まる。仲良しグループが相談して誰かに票を集中させることもある。(たなちゃんさん)

役員決めが早く終わるよう、「ポイント制」という仕組みを採用するPTAがときどきあります。これは「本部役員をやったら5ポイント、委員は3ポイント、係は1ポイント」というふうに役職ごとに獲得ポイントを決め、「卒業までに何ポイントためる」といったルールを会員に課すものです。

高学年になると、獲得ポイント数が少ない保護者に声がかかり、一人残らず全員にPTAの「仕事」をやらせることができます。

役員決めが早く済むので、一見よさそうに見えますが、完全に強制を前提とした仕組みですから、雰囲気が悪くなることを免れず、弊害が目立ちます。

さらに、ポイント制は一度始めると、やめるのも困難です。ポイント制のもとで活動した保護者は「ポイント制をやめる」=「せっかくためたポイントが失われて自分が損をする」と感じ、継続を求めるようになるからです。あるPTAでは、役員さんが委員の数を減らそうと提案したら「ポイントがためられなくなる」と苦情が出たといいます。

一方で「ポイント制をやめたらPTAの雰囲気がよくなった」という話もよく聞きます。

大阪のある小学校のPTAでは、保護者全体にアンケートを実施。「廃止に賛成」が7割だったため、なくすことにしたそう。

川崎市中原区PTA協議会の元会長・宮田大輔さんは、各PTAの会長や役員さんたちに「ポイント制はNG」と周知し続けた結果、区内すべてのPTAのポイント制が廃止に。最後に残った1校では、校長先生から「やめましょう」と言ってもらったことも、効いたようです。

ポイント制は残しつつ「実質無効化した」例もあります。

岐阜県の小学校の元PTA副会長・高橋尚美さんは、一部の根強い反対からポイント制自体はやめられなかったものの、代わりに「免除のルールをやめ、理由不問で誰でも辞退可能にする」ことで、ポイントを「ただの点数」に変換したということです。