~坂上さんの場合~

いじめ体験がずっとトラウマで

仲の良かった友だちと旧交をあたためるのもいいが、意外な相手と新しい縁が結ばれるのも、年齢を重ねてからの同窓会の醍醐味だろう。

医療関係の仕事をする坂上薫さん(48歳)は昨年、都内のホテルで開かれた中学の同窓会で幹事の一人として活躍した。準備は半年前から始まり、男女8人のメンバーが月に一度集まって参加者への連絡などを進めていく。

しかし最初に幹事会へ誘われたとき、坂上さんは参加を迷ったという。というのも、出身中学は当時かなり荒れていたそうで、「幹事会のメンバーにも、その頃の“不良”が何人かいて。私は体育会系の部活をがんばる“普通”の子だったので、『うまくつき合えるかな』とビビっていました(笑)」。

実際に活動が始まってみると、そこは仁義にあつい元不良たち。面倒見はいい、ネットワークは広い、仕事はバリバリこなす。

「ああ、こんなにいい子たちだったんだ、って感激しましたね」

もうひとつ坂上さんにとって気がかりだったのは、あるクラスメートとの再会だったそうだ。

「彼女は一匹狼的な不良だったのだけれど、なぜか私は敵視され、ある日突然因縁をつけられたことがありました。私にとってはそれが、人間が怖いと思った初めての経験でしたし、そのいじめ体験は、ずっとトラウマとして心に残っていました」

彼女はその後学校に来なくなり、わだかまりを残したまま30年が経過。同窓会に彼女はあらわれなかったが、坂上さんはほかの幹事から意外なメッセージを受け取ったという。

「彼女はいろんな人に対して、『申し訳ない気持ちがあるので、参加できない』と言ったそうなんです。いじめた側も、そんなふうに思うんだ、と驚きました」

さらに後日、地元で仲間と飲んでいた坂上さんのもとへ、幹事会のリーダーだった男性から「(いじめた彼女と)一緒に飲んでるから、引き合わせるよ」と連絡が来た。

「お互い最初は気まずくて黙っていたけれど、リーダーの彼が話をつないでくれて、彼女が自分から『あのときはゴメンね』と謝ってくれたんです。私は『いい経験だったよ』と応えたけれど、まだ何か足りないと感じて『握手しよう』と言ったの」