もっと何かできるはず

娘のような後輩たちが、デジタル機器を駆使しててきぱきと仕事を進める姿にも大いに刺激されたという漆原さん。

「また、これまで同窓会を支えてこられた大先輩のお姉さま方が、いまも母校のために惜しみなく働かれる姿にも感激しました。還暦前の私なんて、まだまだひよっこ(笑)。もっと何かできるはずと思えたんです」

漆原さんは子どもの手が離れた頃にボランティアで地域の子どもの学習指導を始め、5年前からは広域通信制高等学校で社会科の講師を週2~3日続けてきた。

「そこで手にした『日本史A』の教科書が、戦争を挟んだ近現代史をコンパクトにまとめてあって、すごく面白いと感じていました。そうした話題を役員会の合間におしゃべりしていたら、『そんな講義があったら、私も聞いてみたい』という声が返ってきて」

その反応に勇気づけられ、実家のある仙台のカルチャーセンターに「教科書で学ぶ日本の近代史」として講座の提案をしてみたところ、めでたく開講が決定し、講師を務めることに。同窓会の引き継ぎもすべて終えた今年7月から、月に2回、東京とを往復する生活が始まった。

「新幹線代を考えると、仕事としてはまったく赤字(笑)。でも仙台で一人暮らしをする母の顔も見られますし、最近のニュースと結びつけて歴史を考えることに大きな意義も感じています。長男は『やっと肩の荷が下りたというのに、また何やってるの』と言うけれど、『世の中は、その場の損得だけで動いてるわけじゃないのよ』と言い返しています(笑)」

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ただ参加するだけなら、思い出話に花を咲かせるだけの同窓会に、何の意味があるのかと思えるかもしれない。

しかし思いがけない再会や、友との語らい、誰かの笑顔が見たいという気持ちから、新しい人生のヒントが見えてくることもあるのだろう。

もし次に同窓会の知らせが届いたら、そんな前向きな気持ちで「出席」に○印をしてはどうだろう。