『シス・カンパニー公演 ケンジトシ』
新型コロナウィルスの影響で公演中止が決定された演目もありますが、各々の舞台人が作品に込めた思いを尊重し、記事を配信することにしました。最新情報はそれぞれの公式サイトでご確認ください。

宮沢賢治と妹トシの深い絆を新たな視点で瑞々しく描く

中村倫也と黒木華。映像や舞台などで活躍し、華と実力を兼ね備えた2人が、宮沢賢治とその妹トシを演じる。2019年のドラマ『凪のお暇(いとま)』での名カップルぶりが記憶に鮮やかな両名が、再び出会う。

『銀河鉄道の夜』『風の又三郎』、そして天災を前に詠んだ絶唱「雨ニモマケズ」などで、今に至るまで私たちに深い感動を与えてきた宮沢賢治。彼は、大地を望み、天空を仰いで言葉を紡ぎ、私たちにかけがえのない感動を残してくれた。そしてその賢治と深い絆で結ばれていたのが、2歳年下の妹トシだ。賢治は聡明で信仰篤きトシを慈しみ、トシもまた不器用な生き方しかできない賢治を理解し支えた。

トシは若くして病に倒れ、24歳で早世する。賢治がトシの死にあたり残した詩「永訣の朝」が、哀切だ。熱に浮かされた病床で兄に訴えた「あめゆじゅとてちてけんじゃ」、つまり「雨と雪を取ってきてほしい」は、あまりにも有名である。

その伝説的な絆に想いを重ねて新作を書き下ろしたのは、劇作家の北村想。代表作に『想稿・銀河鉄道の夜』があるほどで、賢治に対する思い入れは深い。しかし煙に巻くような語り口で知られる北村のこと、事実を伝記のように並べる作品にするはずもない。兄妹に関心を寄せる第三者的な男を登場させて2人の関係を探り、物語を自在に飛ばす。

演出には、北村とは初タッグとなる栗山民也があたる。しかし、リアリズムの名手で、隙のない構成と緻密な検証に定評のある栗山民也と、地上からちょっと浮いたファンキーな作風の北村だ。対照的な2人が相対したとき、どんな化学反応が生まれるのだろうか。舞台の空気が一瞬で違う次元に突入する。そんな演劇的展開を、期待したい。

ほかのキャストも魅力的だ。兄妹に関心を寄せる男としてベテラン・段田安則が出演し、助手の田中俊介を従えて物語を牽引する。加えて稲継美保、河内大和らが賢治の世界観を立体化し、向島ゆり子によるビオラ演奏が彩りを添える。

タイトルが意味深長だ。「賢治とトシ」、「ケンジと詩」、「ケンジと死」……。そんな連想を馳せつつ、生の舞台に劇場で出会える喜びに浸りたい。浸れることを、切に願う。

シス・カンパニー公演
ケンジトシ


6月5~28日/東京・紀伊國屋ホール
作/北村想 演出/栗山民也
出演/中村倫也、黒木華、段田安則、 田中俊介、稲継美保、河内大和、斉藤直樹、野坂弘、依田朋子、向島ゆり子(ビオラ演奏)
☎03・5423・5906(シス・カンパニー)
※本公演は全公演の取りやめ、延期が決定されています

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『パルコ・プロデュース2020 裏切りの街』

裏切りの罪悪感もなく関係を続ける2人

無気力なフリーターの青年と平凡な主婦が出会い、逢瀬をくり返す。しかし青年には恋人が、主婦にはサラリーマンの夫が。裏切りの罪悪感もなく惰性ともいえる関係を続け、先のことは考えない、考えないふりをしている2人……。

作者は、セックスや暴力を赤裸々にリアルに描いた作品で物議を醸し、評価もされてきた三浦大輔。彼の2010年初演の作品が、Hey!Sy!JUMPの高木雄也(高ははしごだか)主演で再演される。

初演で田中圭が演じた青年の役だ。主婦は奥貫薫、初演で松尾スズキが怪演した夫を、演劇舞台初出演のお笑い芸人「とろサーモン」の村田秀亮が演じる。人生から逃げて逃げて、その先にあるものは?

パルコ・プロデュース2020
裏切りの街


5月31日~6月16日/東京・新国立劇場 中劇場
作・演出/三浦大輔 音楽/銀杏BOYZ
出演/髙木雅也(Hey! S y! JUMP) 、奥貫薫、 萩原みのり、米村亮太朗、中山求一郎、紺野ぶるま、村田秀亮(とろサーモン)
☎03・3477・5858(パルコステージ)
※大阪公演あり
※本公演は全公演中止が決定されています

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『加藤健一事務所vol.107 サンシャイン・ボーイズ』

史上最高といわれたコンビ、久々の復活なるか

俳優の加藤健一が自ら演じたい舞台を制作するために作った加藤健一事務所も、今年創立40周年。それを記念して“ブロードウェイの喜劇王”ニール・サイモンの名作を、佐藤B作とのW主演で上演する。ウィリー・クラーク(加藤)は、かつてヴォードヴィルの人気者だったが今は落ち目だ。

そんな彼のもとに久しぶりの大仕事が舞い込むが、犬猿の仲の元相棒ルイス(佐藤)との共演が条件と聞いて、断固拒否。史上最高といわれたコンビ、久々の復活なるか……。

加藤と佐藤、古希を迎えた同年代の役者2人が、おのれの人生を重ねて大人のコメディを演じる。笑って、しんみり。泣けます!

加藤健一事務所vol.107
サンシャイン・ボーイズ


5月6~17日/東京・本多劇場
作/ニール・サイモン 訳/小田島恒志、小田島則子 演出/堤泰之
出演/加藤健一、佐藤B作、 佐川和正(文学座)、田中利花、照屋実、加藤義宗、韓佑華 声の出演/清水明彦(文学座)、加藤忍
☎03・3557・0789(加藤健一事務所)
※本公演は東京公演の延期と、全地方公演中止が決定されています

※上演期間は変更の可能性があります。最新の情報は、各問い合わせ先にご確認ください