検事を早期退職し、社会福祉活動に尽力してきた堀田力さんと、妻の明子さん(撮影:宮崎貢司)
ロッキード事件(1976年)を担当するなど、敏腕検事として活躍してきた堀田力さん。57歳で早期退職し、社会福祉活動に尽力してきた。2022年末に脳梗塞で倒れたものの、89歳の現在も地域社会への働きかけを続けている。妻・明子さんと〈第三の人生〉について語り合った(構成:篠藤ゆり 撮影:宮崎貢司)

歩行が困難になり、文字を読むのも一苦労

力 脳梗塞の予兆はとくに感じていませんでした。不調があっても、この歳ならそのくらいあるだろうと捉えていましたので。

明子 最初に倒れる8ヵ月ほど前、夫は勤務先近くの階段で転んだと話していました。「足を踏み外したの?」と聞いたら、「足はもたついていない」という返事。そのときピンと来ていたらよかったのですが……。

力 その後もレストランを出たところで転んで、顔を切ったり。それでも年相応、足腰の衰えと思っていたんです。

明子 最初に脳梗塞を起こしたのは、2022年12月中旬。休日、自宅で過ごしていたとき、夫が「体が動かなくて変だ」と言うのです。さらに「食欲もないし、味がわからない。左目が見えにくいし、左手が動かない」と。これはただごとではないと思いました。

急いでかかりつけの病院に行って、MRAの撮影をしたところ、右脳に梗塞が見つかったんです。入院期間は10日ほどでしたが、後遺症が残りました。