悪阻が原因ではじまった元夫とのすれ違い
子どもを授かり、病院で心拍を確認できた時、自然と涙がこぼれた。「嬉しい」と「不安」が入り混じった涙は、医師にも元夫にも「嬉しい」だけのものとして捉えられた。しかし、10ヵ月に及ぶ妊娠期間は、私にとっても元夫にとっても、大いなる試練となった。
妊娠した多くの女性が、「悪阻(つわり)」を経験する。ただ、私の場合はその症状があまりにも重かった。ほとんどの食べものを受け付けず、水さえも嘔吐する。唯一吐かずに飲み込めたのは、冷やしトマトのみ。
初期の頃から出産当日まで、その状態が続いた。妊娠期間に体重は10キロ以上減り、脱水症状と衰弱が酷かったため、2度の入院を余儀なくされた。
元夫は家事の経験がなく、私が入院してはじめて洗濯機の回し方を覚えた。仕事が忙しかったのもあるが、元夫の母親が専業主婦だったこと、結婚後も私が家事のすべてを担ってきたことが大きな要因であった。
元夫にとって、家事は「やってもらうのが当たり前」なタスクだった。私が動けるうちはそれでよかったが、悪阻で倒れて以降、あらゆる歯車が狂いはじめた。
ホルモンバランスの乱れと悪阻の辛さが重なり、私の心の余裕は減る一方で、元夫に対して「どうしてわかってくれないの?!」と憤る日々が続いた。だが、今になってみれば、元夫も余裕がなかったのだろう。私が母親1年生だったのと同じように、彼も父親1年生だったのだ。そんな当たり前のことに、あの頃は思い至らなかった。