行為の後に「用済み」と言われて

ある日、元夫は準夜勤の仕事があり、深夜2時に帰宅した。その日も長男はよく泣き、私は疲れ果てていた。元夫の帰宅時、授乳を終えて寝たばかりの長男に添い寝していた私は、横になったまま「おかえり」と囁いた。元夫は「ただいま」の代わりに「疲れた」と言い、長男が寝ていることを確認したのち、私を別室へと誘った。

私も疲れている。彼も疲れている。だったら早く寝たほうがいいのに。そう思ったが、以前行為を拒否した際にひどく不機嫌になられたことを思い出し、音を立てずに腰を上げた。およそ10分にも満たない短い性交だった。特に深く考えたわけではなく、ただ本能的に彼の胸元に顔を埋めた。こうして触れ合う時間を大切に思ってくれているうちは、きっと大丈夫。そんな気持ちで目を閉じた矢先に、冷たい声が降ってきた。

「用済みだからあっち行って」

にわかには信じがたい言葉だった。交際中の彼は本当に優しい人で、間違ってもこんな台詞を口にするような人ではなかった。

当時住んでいた社宅は古い一軒家で、どの部屋も隙間風がひどかったため、夜は必ず雨戸を閉めて眠っていた。物置代わりに使っていた6畳間に簡易的に敷いた敷布団の上で、私の中に残っていた彼への愛情が砕けた。風で鳴る雨戸の軋みが、やけにうるさい夜だった。

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