伸びる選手の見分け方

九重さんに話をお聞きして、私は広岡達朗さんの言葉を思い出しました。

広岡さんは、「この選手はモノになる」と、ひと目で見抜いてしまうので、「選手のどこを見ているのですか?」と聞いてみたのです。すると、こんな答えが返ってきました。

『活の入れ方』(著:工藤公康・九重龍二・藤平信一/幻冬舎)

広岡:「一番わかりやすいのは、人の話を聞いているときや、練習の態度ですね。失敗したときに、まわりに言い訳をする選手はダメです。反対に、空振り一つで激しいくらい悔しがる選手は伸びます。

コーチの言うことに『はい!』『わかりました!』と、返事だけよいタイプも長続きしませんね。そういう小器用なタイプは、その場でできても、明日にはまた元に戻ってしまいます。

むしろ少し不器用で、明日も明後日も、ずっとできるようになるまで、コツコツ続ける人がモノになりますね。『人の言葉を簡単には信じないけど、納得したら徹底的にやる』という素直さも大事な要素かもしれません。

西武で監督になったときに、前の年に石毛宏典がルーキーイヤーで3割打ったんです。私は1年目の結果で満足してほしくなかったから挑発しました。『お前、それでよく新人王が獲れたな』と。彼は不満そうな顔をしていましたよ。

そこで私は、彼のライバルに当たる選手を丁寧に指導しました。石毛はピンときたんでしょうね。自分から熱心に練習するようになりました」(以上、広岡さん)

掃除と石毛選手の話は、一見、無関係に思えます。しかし、根底には「納得したらとことんやる」という一途さがあると思うのです。