音楽で心が一つに

初めのころは、私よりも年上の明治生まれの女性ばかりでした。私が言い出したからには、おしゃべりだけじゃなく、みんなの心が一つになれるようなことをやりたかった。それで、誰もが夢中になれる音楽を思いついたんです

お金をかけずに楽しめるでしょう。私も小学校で教えていることを、そのままやればいいわけ。

あの時代ですから、みんな自分が演奏するなんて初めてのことです。

大きな紙に楽譜を書いて、出番を順に決めてね。それはそれは一生懸命でした。とは言っても楽器はないから、フライパンやらバケツやら音が出るものを持ち寄って棒でたたくんでございます。

中には、壊れたおもちゃの木琴もありました。カタコトカタコトまともな音は出んのじゃけど、そのおばあさんは大演奏家のようなそぶりでダーッと悦に入って鳴らすんです。

音が外れても気にしないの。気持ちよく演奏してくれるのが私はうれしゅうてね。あー、今でも目に浮かびます。みんなもどんどん元気になって、ほんまにうれしかったなあ。

徐々に、仲よしクラブのある日曜日の朝だけは家の人も「公認」で、みんな堂々と出かけるわけ。フォークダンスをしたこともありましたが、今はもう長いこと大正琴をやっています。

『103歳、名言だらけ。 なーんちゃって 哲代おばあちゃんの長う生きてきたからわかること』(著:石井 哲代、中国新聞社/文藝春秋)