「常識」を覆した

実際、第7回「事件」は18.4%、第8回「人命は地球より重し」は19.2%と高視聴率。

第8回は、フジの「月9」ドラマ中山美穂主演『君の瞳に恋してる!』に一矢を報い、「そんなに面白いのか」とドラマ関係者の間でも評判となった。

「政治のドラマは当たらない」との「常識」を覆したとの達成感があった。

その少し前の2月に入った辺りから、テレビ評論家がこのドラマについて言及するようになっていた。

「思いきりのよい踏み込みがほしい。企画自体はいいが、そこらあたりでちょっぴり欲求不満を残すのである」(佐怒賀三夫 1989・2・11『讀賣』夕刊)、「ジバン、カンバンは分かったが、この代議士のカバン(政治資金)の中身まで納得の形で描かれるかどうかである」(松尾羊 89・2・12『毎日』夕刊)。

新聞掲載時からして、3~4回観たところでの「批評」で、いずれも「様子見」といったところ。

制作者にとって、いかにも「中途半端」なものに感じられた。

連続ドラマなのだから、かつて『調査情報』536号・545号で私が触れた、『淋しいのはお前だけじゃない』の時の丸谷才一や、『深夜にようこそ』での川本三郎のような全回を観た上での批評が欲しいと思ったものである。

※本稿は、『証言 TBSドラマ私史: 1978-1993』(言視舎)の一部を再編集したものです。


証言 TBSドラマ私史: 1978-1993』(著:市川哲夫/言視舎)

蘇るあの時代のあのドラマ!

元TBSの辣腕プロデューサーが初めて明かす70年代から昭和の終わりにいたる時代の動きとテレビドラマの舞台裏と人間模様。

現場の人間だからこそ語ることのできる企画発想の方法やディレクターとプロデューサーの違いなど、映像関係クリエイター必読の内容。