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家事を助けてくれる、ありがたいサービスやノウハウ。忙しい時には利用する人も多いだろう。その一方で、心のどこかでうしろめたさを感じてしまうという人も。罪悪感のもとを探ってみると、人それぞれ異なるようで──。子どもも巣立ち、夫と2人暮らしをしている佐和子さん(仮名)の罪悪感とは。(取材・文=玉居子泰子)

「家事は女性の仕事」という思い込み

「家事を手抜きする罪悪感は40年間持ち続けている」と言いながらも、罪悪感の内容に変化があったと語ってくれたのは三好佐和子さん(65歳)だ。2人の娘はすでに巣立ち、現在は夫と2人暮らし。気持ちよく整頓された自宅を訪ねると、おいしいレモングラスティーを淹れてもてなしてくれた。

24歳で結婚し、2年後に第一子を出産。当時は少数派の“働く女性”だったが、家事や育児は女性がやるものという概念は捨てきれなかった。実母は遊びに来るたび、家が片づいていない、家事が下手だと、佐和子さんに小言を言った。

「昔は母が正しいと思っていたので、責められるたびに罪の意識を感じていました」

自身も、家事をいい加減にやればいいとは思っていなかった。心地よい家に住みたいし、料理は好きだ。しかし、外で働き、2人の子を育てながら、家の中のことを1人で回すには、あまりにも時間が足りなかった。

「娘たちが幼い頃は、やるべき家事をきちんとできていないことに対する罪悪感が強かったですね。当時は保育園の数も今よりずっと少なく、0歳からベビーシッターを週1、2回頼んで、食事の下ごしらえや、簡単な掃除もお願いすることで、なんとか乗り切っていました」

シッター代は当然のように自分の給料から捻出していたが、ある日、仕事仲間の女性に指摘された。

「夫婦で半分ずつ出すのが当然。妻だけで支払っていたら、あなただけじゃなく、将来娘さんたちの首を絞めることにもなる。『家事は女性の仕事』という思い込みを家族に持たせてしまうよ」

そう言われて佐和子さんは目が覚めた。とはいえ、夫は典型的な昭和の企業戦士で、家事はまったくできない。電子レンジでご飯を温める方法がわからず、冷凍ご飯をかじった逸話まである。

「家事をしないなら外注費を出してほしい」と伝えると夫は激怒。金銭的なことを前面に出した言い方は良くなかったと反省しつつも、佐和子さんは夫にも家事を担うよう訴え続けた。

娘たちが家を離れ、子育てが一段落した2004年がひとつの転機になった。思いきって、友人と20日間のヨーロッパ旅行に出かけたのだ。夫をひとり家に残すのは初めてのことだった。

「壮大な家出です(笑)。私が夫に望むのは『自分のことは自分でして』ということだけなのですが、それがなかなかできない。案の定、帰宅したら洗濯物が山になって、家の中は悲惨なことになっていました」