「老後の暮らしにかかるお金は、子どもの世話にはならない」。多くの人がそう考えているでしょう。しかし実際は、生活費や介護に必要なお金を子ども世代に支えてもらう例が増えています。老後が長くなり、介護の期間も延びるにつれ、親の老後の費用負担が子世代の家計を圧迫する事態になることも。前編につづき後編では実際の3つのケースとともに、介護破産の回避と介護に際して家族で確認しておきたいポイントも紹介します(イラスト=曽根愛)
高橋家の場合

《夫の母が要介護に》遠距離介護の交通費

熊本で一人暮らしをする義母に介護が必要になった。最初は月に1回程度だったので、自分たちが住む関西からの飛行機代も気にならなかったが、義母が肺炎になったり、施設でトラブルを起こしたりして、頻繁に帰省しなければならなくなると、負担が増した。

急に帰るときには、格安チケットが取れず、気づけば年間の交通費は夫婦で250万円にまで膨れ上がってしまった。

 

交通費⇒関西─ 熊本(夫婦合計)
年間250万円

 

交通費がじわじわと膨れ上がってきて

介護にかかる交通費では、1回の費用はさほど気にならなくても、積み重なると大きな負担になります。特に高橋さんのような遠距離介護の場合、介護末期に近づくほど毎週のように飛行機で実家に帰ることになり、急に費用が膨れ上がるのです。

原則としては、「介護にかかる費用は親が負担する」ですが、交通費は介護費としてとらえにくいもの。もし親が交通費を出すのが難しければ、子どもの近くに親を呼び寄せることも提案してみましょう。

親は「最後まで自分で頑張る」「友人と離れたくない」など、住み慣れた土地を離れるのを嫌がる傾向にあり、介護関係者から「親御さんはそれで本当に幸せですか?」「要介護度が進みます」と言われ、傷つくことがあるかもしれません。しかし介護にかかる経済的な負担は、ほかの誰かが担ってくれるわけではないのです。

提案の際には、年間の交通費や、これから先にかかる諸経費のシミュレーションを提示することもお忘れなく。実際にどの場合にどれだけの経費がかかるか明確化することで、親が納得しやすくなりますよ。