『婦人公論』2006年3月7日号

人の笑顔を見るのが好きなんです

2006年(平成18年)からは、舞台「志村魂(しむらこん)」を旗揚げ。毎年公演を続けていた。

旗揚げの講演は、第一部が「バカ殿様」とコント、第二部が藤山寛美さんの名作『一姫二太郎三かぼちゃ』。藤山さんの伝説の舞台に挑戦する狙いを志村さんはこう語っている。

「藤山さんの作品は、人情や親孝行といった、今の世の中から忘れられかけている日本人の良さが描かれているんですね」

「藤山さんが築いてきた人情味のある温かい笑いの世界を、誰かが残していかなくてはいけないと思うんですよ。それを自分ができればいいな、と。最近のお笑いを否定するわけではないけれど、それだけがお笑いの世界ではないし。笑いながら、なんとなくしみじみとして、『やっぱり家族っていいな』『生きているっていい』と感じてもらえればなぁ」
(「バカ殿は永遠、マンネリこそワザの見せどころ」2006年3月7日号)

自身の未来についても、「カラダが動く限りは、ずっとバカをやっていたい」(1999年)と志村さんは言っていた。

「けっきょく、笑われるのが好きなんですよ。人の笑顔を見るのが好きなんです」

「よく、僕のコントは下品だとか何とかっていうけど、あれ、金持ちの人が言ってんじゃないかな。そんなことより、仕事帰りに屋台で一杯飲んで帰ってくるようなオヤジさんが、僕のコント見て疲れや悩みを忘れて、また明日もがんばろうという気になってくれたら、それが一番うれしいですね」(1999年)

新聞も、テレビも、ネットも暗いニュースばかり。「イヤなことがあっても思いきり笑えば忘れられる」という志村さんの言葉は、今をどう乗り越えていけばいいのかを、教えてくれている。