医師やご家族が出ていった後の呟き
こんなことがありました。
ある年配男性の人生会議をしたときです。医師は「まだやれる治療もあるし、頑張ってもいいよ」と言い、子どもさんたちも「お父さんもう少し頑張ってみたら」と言いました。それでも男性は、「もう何もしないで、痛みだけ取ってくれればいい」と言うのです。
でも会議が終わり、医師やご家族が出ていって私とふたりだけになったとき、男性はポツンと呟きました。
「本当は、まだ生きていたいよ」。
うなずきながら耳を傾けていると、「わしが生きているだけで、お金も迷惑もかける。だから言わん」と言うのです。
本音としては、少しでも長く生きていたい。
でも、まわりに迷惑をかけないように早く「おしまい」にしなければ、という建前のほうが前面に出たのです。
結局、男性のお話をよく聞いて話しあったうえで、その本音は私の胸の中にしまっておくことにしました。
もちろん、私も、日本人と各国の人を正確に検証したわけではありませんし、患者さんの性格によるものも大きいと思います。でも、こういう人はとても多いのです。