教室の看板を下ろし、土に触れる生活へ
私は約60年間、生まれ故郷の福岡で料理教室を営んでいました。結婚6年で夫を亡くし、2人の子どもを育てるために夢中で働いてきましたが、2019年11月、93歳で「桧山タミ料理塾」の看板を下ろしたところです。ここまで続けられたのは、たくさんの生徒さんのおかげ。感謝しています。
20年1月からは若い生徒さんが主体となって、思いのままに料理を作る「桧山料理勉強会」を始めたばかりでした。新型コロナウイルスの影響で、今は残念ながらお休み中です。
これまで寝る間もなく働いてきたので、こんなに自由に使える時間ができたのは初めて! でも、意外とこの生活を楽しんでいます。今は、大分の山奥に住んでいる息子の畑仕事を手伝うために、福岡と行ったり来たり。昔から土をいじるのが好きだから、こういう時間ができてありがたいの。草を取ったり、苗を植え替えたり、けっこう忙しいんですよ。
長年続けてきた心と体の養生
私は毎日、陽がのぼるより少し前に起床します。一日のうちで、朝が一番好き。リビングに風を通したらゆっくり深呼吸をして、のぼってくるお日さまに「おはようございます。今日もよろしくお願いします」と手を合わせて一日が始まります。陽の光を浴びると、体の底から力が湧いてくるようです。たとえちょっと嫌なことがあっても、「新しい日が始まるから大丈夫!」って。
その後、20分ほどラジオを聴きながら乾布摩擦をして、よく焼いた梅干しをひと粒入れた番茶を飲むのが日課です。
「朝の梅は難逃れ」と昔から言われます。梅干しは血液をサラサラにする以外に殺菌・解毒の作用があるので、胃腸の調子がよくなり、食欲も出てくる。とくに古い梅ほど効果があるのです。体の芯から温まって汗が出るから、風邪もはやく治ります。
医者だった兄が患者さんに勧めるのを聞いて始めた乾布摩擦は、もう50年以上の習慣です。棕櫚(しゅろ)のタワシを使って、手先や足先から心臓に向かってザッザッとこすります。痛くないです。気持ちいいの。そのおかげか、私の体温は他の人よりも高い。冬の寒い時は、いつもまわりの人の手をこすって温めてあげるお役目なんです。