イラスト:花くまゆうさく
暑い時期は不調がつきもの。「よくあること」と放置して、ときに深刻な病となったり、「あれは病が見つかる前兆だったのか」とあとから嘆いたり。あわや、の思いをした人たちが得た学びとは。(取材・文=島内晴美)

98歳、土いじりと草むしりを日課に

なんとなくだるい、食欲が落ちたなど、夏に感じる体からのSOSは、「夏バテ」で片づけがち。わざわざ病院に行くほどではないと判断してしまうことが往々にしてある。カズコさん(68歳・仮名=以下同)の母、ミエさん(98歳)もそうだった。

1年前、梅雨明け早々に暑い日が続いたころ、母親の元気がないと二世帯住宅で暮らす弟から連絡が入った。近所に住むカズコさんが訪ねていくと、当の本人は「騒ぐほどのことじゃないわよ」とあっけらかんとしている。

「食欲がないし、お腹を下したと聞いたから、悪いものでも食べたか、暑さにやられたのかしらと思ったんです。それに母は年齢の割に健康なことを自慢していて、ただでさえ無茶をすることが多い。また長時間草むしりしたんでしょう、と口うるさく言って、怒らせてしまいました」

ミエさんは並の98歳ではない。土いじりが大好きで、庭の草むしりが日課。敷地内に設けた菜園では野菜作りに精を出し、樹木の剪定もお手のものだ。さらに、長年大学で家政学を教えた経験があり、栄養や健康に関する知識には絶対の自信を持っているから、娘の言うことなど聞いてはくれない。

「持病もなく頭もしっかりしている。自分で納得しないと、うんとは言わない人なんです」

カズコさんは、「とにかく部屋でおとなしくしていて」と言いおいき、その日は帰ったのだが……。