左から、医師の常喜眞理さん、作家の荻野アンナさん、経済コラムニストの大江英樹さん(撮影:木村直軌)
病気も老後の資金も、どうなるかわからないから不安になるもの。では、目に見えない心配事から解放されるにはどうしたらいいのか。慶応義塾大学の教授職からの退官をいよいよ間近に控えた作家の荻野アンナさんが、経済コラムニストの大江英樹さんと医師の常喜眞理さんに聞きました(構成:山田真理 撮影:木村直軌)

50~60代が受け取る年金は、まず心配ない

荻野 私は「アリとキリギリス」で言えば、まさにキリギリスだと思っています。お金の面では、亡くなった母(洋画家の江見絹子さん)の建てた実家を美術館にする計画を立てていて、今ある資産はすべてそこへ投入するつもりでいます。だから老後の資金は、ほとんどないに等しい。

健康についても若い頃から割と無頓着でしたし、50代半ばには大腸がんも経験しています。そんなキリギリスの私でも、低値安定でいいから何とか最後まで自分で自分の面倒を見ていくにはどうしたらいいのか。今日は専門家のお二人に伺いたいことだらけ、という気持ちで来ました。

大江 現在はまだ、慶應義塾大学で教えていらっしゃるのですよね。

荻野 2022年の3月で退官となり、いよいよ夢の年金生活スタートです。実は65歳以降もシニア教授として働ける制度が今の職場にできて、私も応募しようかずいぶん迷ったのですけれど、そもそも業績が少ないし(苦笑)。自分の時間を持つことのほうが人生にとって贅沢では──と。(笑)

常喜 いつまで働くかというのは、大きな課題だと思います。無理に働いてお金を稼いでも、それで健康を損ねてしまっては元も子もありません。とはいえ、私はまだ現役の医師として働いていて年金の受給開始年齢まであと7年あるので、「国の年金制度は今後も大丈夫?」と時々心配になります。

大江 年金不安の背景には少子高齢化がありますが、日本が高齢化社会に突入してからすでに半世紀。その間に2回大きな見直しをすることで、日本の年金制度は現在もしっかり機能しています。また、年金財政の安定に活用される「年金積立金」の残高も、実は日本が世界一。さすがに100年後の未来はわかりませんが、今50~60代の皆さんが受け取る年金は、まず心配ないと考えていいでしょう。

荻野 わあ、良いことを伺った。