会社をやめて祖母と母の遠距離介護
近藤雄二さんの場合
生活費や介護にかかるお金を考えると、仕事をやめて収入がなくなるのは大打撃だ。家計の主な担い手である男性ならばなおのこと──。
「職場の理解があり、支援態勢が整っているのなら、仕事を続けるという選択もできる。けれど、両立のために無理をし、介護者自身がつぶれたのでは何にもなりません。介護される人も不幸です」
と言うのは、離職を経験し、現在、72歳の母を遠距離介護している近藤雄二さん(43歳)だ。
介護は近藤さんが40歳のときに始まった。認知症を患っていた当時89歳の祖母が子宮がんで余命半年と宣告されたのと同じ時期に、祖母の世話をしていた母の認知症も発覚。誰かが二人の介護をする必要があった。
でも、祖母と母が同居する実家は岩手県で、近藤さんの住む東京からは遠い。新幹線なら3時間と少し、長距離バスなら8時間かかる。父親は母と不仲で、ずいぶん前に家を出て行ったので、介護を頼めるはずもなかった。負担は近藤さん一人の肩にのしかかる。
このとき、近藤さんの会社での役職はマネジャー職。朝から晩までミーティングがある職場で、会社にいないと仕事にならなかった。実家と東京の往復で休みがちになればチームみんなに迷惑をかけることにもなる。介護との両立は難しいと、正直思った。
それでも近藤さんは、両立を試みる。介護を終わらせてから深夜バスに乗り、早朝に東京に着いたその足で会議に出席する生活を2ヵ月続けた。結果、仕事も介護もできないほど疲れきってしまう。これ以上は無理と、ついに退職を決意した。
「病院の手続きや医師の家族への説明はほとんど平日。仕事をやめない限り対応はできません。会社に介護休暇の制度はあるけれど、1年以上勤めていることが条件で、当時、転職して1年に満たなかった僕には使えない」