いずれのときも結婚生活を続けていくのが難しいというか、許されない環境が重なって……。結局のところ、私は歌を選んできたのです。とはいえ厳しい選択でした。覚悟を持って選んだつもりでも、選ばなかったもう一つの人生を思うと切なくて。互いに嫌いになって別れたわけではないのでなおのこと。

でも、失ったものが大きいからこそ、「歌を選んでよかった」と言い切れる人生にしなくては終われない、という想いが生まれたのだと、今、痛切に思うのです。意地ではなく、運命を受け入れたということでしょう。潔く自分の人生を歩んでいる今は、歌という宝を授かったことに対する感謝しかありません。

 

大切なのは自分で選択すること

生きることは愛すること、愛することは歌うこと――。これは自分で作詞を手がけた「真綿のように」という歌のワンフレーズですが、この言葉通り、歌は私のすべて。もっとも姉(安田祥子さん)に言わせれば、「あなたは自分を追い込むのが好きね」ということになるのですけれど。

結婚して、子どもを育て、歌い続けている姉の生き方も素晴らしいと思います。バランスよく生きている姉から見れば、私は不器用な女に映るのでしょうね。でも何が幸せなのかは人それぞれ。悔いのない人生を生きるために必要なのは覚悟と本気だというのが私の持論です。誰の人生にも岐路はつきものですが、大切なのは自分で選択することであって、それが正解かどうかは、その後の生き方次第で決まるのだと思います。

でも、努力だけではどうにもならないことがあるのも事実。私にしても、ヒットが途切れ、スランプに苦しんだ時期がありました。今のままではこの世界で生き残れないと思ったときに、司会やコメディエンヌ、女優の仕事に挑戦し、新たな道を拓こうという思いを実践してきたのです。

ある経済評論家の方と対談をしたときに、その方が「由紀さんは歌手としての人生をイノベーション(革新)してきましたね」と言ってくださり、そういう目で見てくださる方がいるのかと嬉しかった。もしも受け身でいたら、今頃私は“過去の人”になっていたかもしれません。