配偶者以外との性交渉を指す「不倫」。毎週のように有名人がスクープされる関心事である一方、客観的な情報はそう多くありません。一方、海外での研究もふまえて、その全体像を明らかにしようと試みているのが、社会学者の五十嵐彰さん、そして経済学者である迫田さやかさんです。何%が「不倫」経験者で、どんな人が何を求めてどんな相手としているのか。お二人によれば「他国と比較する限り、日本は不倫に対して緩めの態度」とのことで――。
婚姻外関係や不倫に関する規範はどのように受け止められているのか
現代の家族を特徴づける考え方として、ロマンティック・ラブ・イデオロギーというものがある。これは結婚と愛と性(セックス)が一体化したものであり、一生に一度の恋に落ちた男女が結婚することが理想という考え方である。当然結婚後も一人に対してのみ愛を注ぎ、性行為を行うことが規範とされている。
ここから、配偶者以外と性交あるいはそれに類した性的関係を結ぶ不倫とは、ロマンティック・ラブ・イデオロギーの規範から外れたものだと捉えることができる。他方、ロマンティック・ラブ・イデオロギーを絶対視しない議論も展開されている。
それでは、人々の間で婚姻外関係や不倫に関する規範はどのように受け止められているのだろうか。データを使って検討してみよう。
今回、International Social Survey Programme(ISSP)という国際比較調査データを使用した。ISSPは世界20カ国以上を対象に、毎年異なるテーマについて行われている社会調査である。
不倫への賛否は宗教をテーマにした調査で質問されており、現在までで1991年、1998年、2008年、2018年の4回行われている。日本はこのうち1998年、2008年、2018年の調査に参加しており、本稿ではこの3時点の調査を用いて分析する。