「母力」とは何か
昔、子どもたちが幼稚園に通っていた頃。
ある日スーパーの駐車場で車がガンガン出入りする中、男の子3兄弟の手を引いて歩いていた若い母親を見かけた。知り合いだったので遠くから名前を呼んで挨拶をしようとした、次の瞬間!!
しっかり手を繋いでいたはずの3兄弟が、まったく違う3方向に向かって、それぞれピヤーーーッ!!と走り始めた。
見ている方向には仲良しのお友達や犬、楽しそうなガチャマシーンがあって、あろうことか、3人が同時にそれぞれ走って行こうとしたのだ(男の子にはよくある話)。
西、北、東の3方向に散っていく子どもたち。
1人だって目を離した隙に見失ってしまうことがあるのに。1人、2人までは腕を掴めても、3人目はどうしたら追いかけられるのか…
凍りついた私の目の前をスーッ!とクルマが走り抜ける。
母親はそれはもう、目にも止まらぬ速さで子ども達を追っかけ引き止めて「回収」した。1人はママからあまりに強い腕力で掴まれて泣き出していたが、なんとかみな無事だった。
その光景に、わたしは母親の一瞬の判断と壮絶な「母力」を見た気がした。
子どもを守ろうとする本能。生まれたばかりの子猫が可愛くて手を差し出したら、そばにいた親ネコに物凄い形相で「フギャアァァァーゥ!!」と怒られる、あの感じ。
1人目を産んだ時、私には2人目子育ては到底無理だと思ったが、その後もう1人息子が生まれて、いまだに私の毎日は子育てでいっぱいいっぱいだ。
3人以上の子育てをしているお母さん達を、わたしはまずその時点で大いに尊敬してしまう所以である。
こんな私にも、我が子のためなら巨大な岩をも担いで放り投げられる不思議なチカラが備わっているんだろうか、と思うことがある。