(写真提供◎越乃さん 以下すべて)
圧倒的なオーラを放つトップスターの存在、一糸乱れぬダンスや歌唱、壮大なスケールの舞台装置や豪華な衣裳でファンを魅了してやまない宝塚歌劇団。初の公演が大正3年(1914年)、100年を超える歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」には「花・月・雪・星・宙」5つの組が存在します。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第53回は「スイス国歌とカンヌで歌った「ランベス・ウォーク」」のお話です。
(写真提供◎越乃さん 以下すべて)

前回「宝塚音楽学校創立110周年。記念式典の日「花のみち」は元タカラジェンヌだらけ。初演は桃太郎のお伽歌劇『ドンブラコ』。冒険と王道と再演を重ねた歴史」はこちら

「スイスで国歌斉唱をしてください」

先日、雑誌の取材で、思い出に残っている旅についてのインタビューを受けました。

すぐに思い浮かんだのは、退団後にお仕事で行ったスイスです。
退団後、どこに向かっていったらいいのかわからず、
必死に自分探しをしていた、そんな頃です。

「スイスで国歌斉唱をしてください」

スイスと日本の国交樹立150周年の「スイス日本友好記念行事公式開会式」で、
スイスと日本の両国の国歌を歌うというものでした。
聞いたときは、なかなか度肝を抜かれました。

ヨーロッパには行った事がなかった私。
スイスがどこにあるのかさえ知りませんでした。

スイスの街並み

スイスはヨーロッパの真ん中あたりにありました。
四方をドイツ、フランス、イタリア、オーストリア、リヒテンシュタインに囲まれた内陸国で、九州よりやや大きいくらいの面積だそうです。