吉永 そういえばこの映画が公開されるのは、9月1日。防災の日ですね。

山田 ええ。100年前のその日、関東大震災が起きた。隅田川近くのあの一帯は、関東大震災と1945年3月10日の東京大空襲で、2度にわたって徹底的に焼かれたんです。空襲では、一晩で10万人もの非戦闘員が殺された。しかも、いかに効率的に壊滅させるか、計算し尽くされた爆撃でした。

吉永 むごすぎます。戦争というのは、本当に残酷ですよね。

山田 小百合さんは、原爆詩の朗読を長く続けておられますね。

吉永 はい、35年を超えました。自分にできる小さなことを何かやっていたいな、という思いがあって。絶対に戦争のない国であってほしいし、日本だけではなく世界から戦争がなくなってほしい。私には何の力もないけれど、声をあげ続けていきたいんです。監督は常に、いろんな思いを持って活動する団体に応援メッセージを送っておられる。そのことに大変感銘を受けますし、いつも背中を押されます。

山田 まさに今、世界がおかしな方向に行って、多くの人が不安を感じている。戦争をいったん止めて真面目に話し合うということが、なぜできないのだろう。止めないから、どんどん進んでいってしまう。原子爆弾だって、あんなもの作らないほうがいいと、誰だって思う。近頃は、AIなんかも怖い方向に行くんじゃないかという気がしてしょうがない。

吉永 不安になりますよね。人間が考えることを止めて何でもAIに頼ったら、大変なことになりそうで怖いです。

山田 「わぁ、科学技術はそんなに発達したのか、バンザイ」という気持ちにはならないね、原子爆弾が発明された時と同じで。そんなもの、作っていいんだろうか。これから映画のシナリオもAIが作る時代になる。それで僕らは幸せと言えるのか。そういう世の中で、僕らは何を考えて作品を作っていけばいいのか。

今のこの世界、この日本という国に生きている一市民として、世界のことを考え、同時に人間のことも考えるのが何より必要だと思っています。

吉永 私も同感です。人工知能の助けを借りなくても、自分たちで考え、助け合って前進しようとする世界であってほしい。

山田 とにかく、一市民としてノーと言えることが大事だね。