考えや感じ方が違って当然

このドラマでは、女性と男性の「意識の差」がはっきり描かれる。ふたりの関係を制度に決められたくないという麻美の意図が汲み取れず、「わからない」と困惑する元気。そんな妹をどこか”めんどくさいやつ”と思っている向井くん。

性別が違えば、置かれた立場も違う。だから考えや感じ方が違って当然。元気や向井くんは、最初こそ相手の考えていることがわからなくて困惑するが、対話を重ねることで徐々に理解を深めていく。麻美と元気は事実婚を選択し、子どもが生まれた時、子どもの名字はどうするかというところまで話し合う。”そういうものだから”で済ませられることを、通り過ぎることができない麻美と一緒に、元気はひとつひとつをお互いが納得が行くように話し合って決めていくのだ。

そういう意味で、このドラマは、”普通”にはまれない、世の中の当たり前に沿って卒なくこなすことができない、違和感を感じたらなかったことにはできない、そんな人たちに寄り添っていたように思う。

『死にそうだけど生きてます』(著:ヒオカ/CCCメディアハウス)

「大人の男女が一緒にいるとさ、すぐ恋愛に結びつけられちゃうよね。男女が行きつくところは結局恋愛しかないって言ってるみたいで、なんかちょっと悲しい」

これは向井くんと坂井戸さんがふたりで歩いていたところ、カップルを対象とした街頭インタビューを受けるのだが、そのときの坂井戸さんのセリフだ。最終回で、麻美が「大勢の人が好きだからって、誰もが好きとは限らないのに」と言ったように、大半の人が求めるいわゆる”普通”の結婚を求めない人だっているし、恋愛が一番ではない人だっている。そういう、”普通”からこぼれ落ちた人たち(といっても少なくないと思うけど)に丁寧にスポットを当ててくれた、そんなドラマだった。