舞台で笠置シヅ子役をパワフルに演じた神野さん(写真提供◎TOI LA VIE〈トワラヴィ〉)
1977年『東西対抗チビッコ歌まね大賞』の出演をきっかけにスカウトされ、1984 年のデビュー以来40年に渡って歌い続け、近年では海外でも活動する神野美伽さん。朝ドラで話題の笠置シヅ子さん役として音楽劇『SIZUKO! QUEEN OF BOOGIE~ハイヒールとつけまつげ~』の主演を務めた。笠置さんをはじめとする昭和の歌手に受けた影響と、自身の歌手人生を振り返る。

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歌のDNA

最近とても強く意識するようになったことがあります。それは、「歌のDNAの存在」についてです。

少々ヘンな表現なのかもしれませんが、私が歌う歌の中にある「感覚」であるとか、「表現」と言ったようなものは私固有のもので、それは他のすべての歌手の方にも言えることだと思います。

声や音程、リズム感などのように生まれながらに持った素質ではなくとも、その歌手の歌を創る要素は沢山あるもので、聴いた音楽、歌、演劇、その他の芸術的要素のすべてがDNAとなり得るのです。

分かりやすく言えば、私の歌の中には江利チエミさんという天才的なアーティストからもらったDNAが生きている、とも言えるでしょう。

私と江利さんの出会い……といっても、私がデビューした1984年にはすでに江利さんは45歳という若さでこの世を去っておられ、1度もお会いした事はありません。

しかし、私がまだまだ幼い頃、テレビから流れてきた江利さんの歌う『テネシー・ワルツ』を聞いた印象はハッキリと憶えています。その歌をJAZZとも知らず、言葉の意味もわからない子どもだった私ですが、江利さんの歌声が心に貼り付いたとでもいうのでしょうか。私の中に江利チエミさんのDNAが宿った瞬間だったと思います。

遡れば、江利チエミさんの歌の中にも彼女が若い頃から憧れてやまなかったエラ・フィッツジェラルド のDNAは間違いなく存在していて、江利さんの歌からは共演まで果たしたエラ・フィッツジェラルドをたっぷりと感じることが出来るのです。