薬の副作用

和田 そうしたなかで、それぞれの診療科の医者が診療し、薬を出すと、しぜんと薬の量が増えます。なかには複数の薬の相互作用によって不具合が生じたり、低血糖や意識障害を起こすこともあるのです。たとえ内科の医者であっても、自分の専門だけに閉じこもっていては、現実の患者さんに対応しきれなくなります。

こんな例があります。ある高齢者が、心不全を診てもらっている医者に、「最近、胸のあたりが痛い」と訴えました。いろいろ調べても原因がわからず、医者は「あまり気にしないように」と言って診療を終えました。

『うまく老いる 楽しげに90歳の壁を乗り越えるコツ』(著:樋口恵子・和田秀樹/講談社)

その患者さんは変形性膝関節症があり、別の病院の整形外科に通い、痛み止めの薬を処方されていました。実は、胸のあたりの痛みは、痛み止めの薬の副作用によって胃に潰瘍ができたことが原因だったのです。

ある日、血液を含む吐瀉(としゃ)物を嘔吐して救急搬送され、ようやく原因がわかったというのです。こうした例でも、総合的な視野を持つ医者がいれば、胃潰瘍を悪化させることは防げたかもしれません。